Q.アナタに鳥肉と蛙肉の違いがわかるかしら?

ポンポン帝国

Q.アナタに鳥肉と蛙肉の違いがわかるかしら?

『ざんねーーーーん!! 今食べたのは焼き鳥ではなく焼き蛙でしたー! それでは規定通り罰ゲームの執行を行います!!』


 いや、だってさ、鶏肉も蛙肉もどっちも美味しかったじゃん。俺ってば焼き鳥はタレ派で、今回のタレ最高だったし。あれでしょ? 最高級蛙肉とグラムいくらの安い鳥胸でも使ったんでしょ? そりゃわからないよー。ずるいずるい。そ、それにきっと塩にしてたらわかったんだって! だから強面さん、連れてこうとしないで? ね? 大丈夫。自分の足で歩くから。俺某有名な宇宙人じゃないから!


 結局、宇宙人式で連れていかれた。まぁ敗者なんだし、こんなもんだよね。そして連れていかれたのは大広間? うん、とりあえず広い部屋だ。あるのはテーブルに二脚の椅子。そして片方にはエロ、えっと、エライ(個人的感想)女性が座っていた。


 俺、ホントこういう雰囲気苦手。無理、ホント無理。だから早く罰ゲーム? やりましょ?


「私、本ゲームの主催者をさせていただいております、オリエです」


「まぁまぁ、ご丁寧にどうも。俺はカズキです」


 あ、眉がピクピクッとした。


「ごほんっ。えー、本日は私のゲームに敗北されたカズキ様に罰ゲームを執行する為、こちらに来ていただきました。このまま罰ゲームの説明をさせていただいてもよろしいでしょうか?」


「ダメと言ったら?」


「それでは、罰ゲームの説明をさせていただきます」


 おい、あっさり無視するなら聞かなくてもいいじゃん!


「説明をさせていただきます」


「は、はい」


 おっかねぇ女だ。オラ、新しい扉を開いちまうところだったぞ。


「えー、これからカズキ様には私の後方にあります扉の先へと進んでいただきます。そして、その先にあるゴーグルが置かれてますのでそちらを付けていただきます。そうしますと、とあるゲームが始まりますので、それをクリアしてください。それが罰ゲームです」


 あるぇ? 思ったより怖くない罰ゲームだった。


 俺は言われるがまま、奥の部屋へ行き、大人しくゴーグルを付ける。すると、視界が暗転したし、全く身動きが取れなくなる。どうしようもないので暫くそのままでいたら、段々と視界が開けてきた。


 目の前に広がる風景は一言で言えば、牧場だった。ただ、そこで飼われていたのが蛙と鶏。鶏はわかるけど、蛙はなぜ? しかもその蛙が異様に大きい。なんたって鶏と同じ大きさだからね。ちょっとグロいよオリエさん。俺はこういうのは牧場〇語みたいにハートフルな感じでやりたいんだ。めちゃリアルじゃん。これはあれか? 俺が鶏肉も蛙肉もわからないような男に対する嫌がらせなのか?


 ……まぁとりあえずゲームの主旨はわかった。とにかく両方育ててみよう。










 十年経った。嘘だと思うだろ? 永遠に鶏と蛙を飼ってるんだぜ? もう段々とやる事なくなってきて、牧場の外にも蛙と鶏が溢れていた。食糧兼、家畜である蛙と鶏はとても丈夫で中々死ななかった。幸いにも飼料もあったので飢える心配もなかったし、ちょっと怖かったけど、自分で解体もした。流石に生きたまま食べる訳にはいかないし。


 あぁ、どうすっかなぁ……。








「もう、どうしましょう……」


 まさか十年経っても……。私はオリエ。地球を管理している神の一柱です。実は、今カズキっていうゲームの敗者に罰ゲームをさせているのだけど、全然進んでくれないの。内容は実に簡単で、にある出荷を百回すればいいだけ。早ければ一週間で終わるのよ、この罰ゲーム。


 そもそもこの罰ゲームを始める発端になったのが、異世界のとある神に食糧の援助と、その異世界に転移させる人間の選定だったのだ。


 当初は、こんなのすぐ終わると思ってた。蛙と鶏は向こうの希望で、すぐ用意したし、都合よく、罰ゲームって名目で適正を確かめる人材を揃える事が出来たわ。けど、そこからが難航したの。出荷はすぐ出来たわ。日本人ってゲーム好きだから、すぐに『メニュー』とか『ステータスオープン』とか恥ずかしげもなく言っちゃうし、ゲームを覚える要領もよかったからすぐクリア出来た……。けど、一番大事な適正、解体が出来なかったの。日本人は平和ボケしてるところがあるから、動物を解体なんてした事がなかったみたいなのよね。ミッションにも盛り込んだけど、合格レベルまで達した子は一人もいなかった。そう、カズキを除いて。


 さらに不幸が重なったのが、異世界の神がカズキを気に入っちゃったのよ……。今回出されていた条件がサバイバル能力と、動物の解体。そして百体の出荷のみ。カズキはあと、出荷さえすれば条件は整ってるのに。むしろ最短って言っていいほど、すぐ条件をクリアしてたのよ? なのに、!!


 ホントは私が助言をしてさっさと終わらせたいのだけど、そこにも制約があって、私が直接助言をする事が禁じられてるの。だから本人が気づかないとクリア出来ない。ホント、予想外だったわ。今も鶏に名前なんて付けて……。ん?


「よしよし、お前はモサモサしてて羊みたいだからメェだな。そしてお前は新しく産まれたからニューだ。よし『メェ』、『ニュー』これからよろ――!?」


「神よ、奇跡をありがとう! って私が神だったわ。私! ありがとう!!」


 これで苦節十年、メニューに漸く気付いたようね。さぁ、あとはそこの出荷を押して! さぁ早く押すのよ!!


「なぁんだこれ? メニュー画面? よくわからねぇな。ん? 出荷ってなんだ。ここにいる子達をどこかに出荷出来るのか?」


「そうよ! 早く出荷を押すのよ!!」


 暫く考えた様子のカズキに嫌な予感がよぎる……。まさか?


「出荷なんて出来るか。もうここの奴らとは十年も苦楽を共にした家族なんだぞ! 今更よそ様にあげる訳ないだろ! 却下、却下。こんな画面見る価値もねぇ」


 うそおおおおおおおおおお!! 異世界の神はもうカズキで決定だって、喜んでたのよ?? まだいっぱいいるんだから百体位出荷しなさいよおおお!!









 結局、私が一緒に異世界に行って監視するのを条件にカズキは未クリアのまま異世界に行く事になった。え? 私神様なんだけど、いくら地球が神様が結構いるって言っても私も暇じゃないのよ?


「ってこら、カズキ! 鶏と蛙と遊んでるんじゃありません! その子達は出荷するんだから、諦めなさい!」


「うっせぇ! エロ神! 俺の家族に手を出すんじゃねぇ!」


「何がエロ神よ!! バカズキ!!」











 うむ、うむ。やはり、カズキにして正解じゃったわい。その後、紆余曲折あったが無事、異世界の危機を救ってくれた。旅の途中に色々あったんじゃが、最終的には仲睦まじい様子をワシに見せつけるおったわい。まぁその話はまた今度じゃな。


「一生喋らないわよ!! だって恥ずかしいじゃない!?」


「どうしたオリエ? 誰と話してんだ??」


「うっさいバカズキ!!」

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