『結界師の一輪華4』

プロローグ

 日本を支える柱石を守る五つの家の一つ、いちみや

 そんな一ノ宮の管轄内に術者協会本部がある。

 協会本部にテロリスト集団『がんどく』が侵入し、危険なじゆを持ち去ったことは記憶に新しい。

 協会のセキュリティは非常に厳しく、それ故に術者達の衝撃も大きかった。

 しかし、呪具は無事に取り返され、元あった場所へ戻された。

 ボスを含めた彼岸の髑髏の一味も捕らえられ、一件落着したはいいものの、また同じような事件が起きてはいけないと、協会のセキュリティは見直され強化されることになった。

 捕らえられた彼岸の髑髏の一味は、術者の領分ということもあり、警察に引き渡されずに協会本部の地下にある部屋へと監禁された。

 そこは問題を起こした危険な術者を捕らえておくための部屋で、彼岸の髑髏は一人ずつ個室に入れられ、二十四時間絶えず監視態勢がしかれている。

 その日も二人体制で備えつけられたカメラを通して監視されていたのだが、監視員が異変に気づいた。

「ん?」

「どうした?」

 突然画面に向かって前のめりになった相手に、もう一人の監視員が不思議そうにする。

「いや、なんか様子がおかしくないか?」

 そう言いながら一つの画面を指さす。

 そこには、部屋のベッドで横になっている彼岸の髑髏の一員である男が映っている。

「え?」

 片方の監視員が目を凝らしてよく見ると、その男は胸元を押さえていた。

 その姿は苦しんでいるようにも見えた。

 直後……。

「うぐあぁぁぁ!」

 もがきながら体を暴れさせもんの叫び声を上げる男に、監視員二人は慌てて立ち上がる。

「なんだ! どうした!?」

「分からん。けどすぐに様子を見に……」

 見に行こうと言い終わる前に、別の画面に映っている一員も同じように叫びだした。

 はっとしてそちらに視線を向けると、床をのたうち回っている。

 さらにそこだけでなく、各部屋に監禁されていた者達が次々に叫び苦しみもがいているのがカメラに映る。

「どうなってるんだ!」

「とりあえず応援を呼べ! 俺達だけじゃ人手が足りない!」

「ああ」

 監視員は慌てて電話に手を伸ばし、救援を求めた。

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