『結界師の一輪華2』

プロローグ

 術者協会。

 柱石をまもる五つの家により作られた協会は国内にいくつかの支部がある。

 協会の本部はいちみやの管轄内に存在しているが、そこは一ノ宮本家以上に厳重な警備がされており、一般人はもちろんのこと、術者として登録をしていない者にとってはなかなか足を踏み入れることのできない場所だ。

 そこには公には外に出せないじゆなどが保管されていた。

 五家にはそれぞれ得意とする分野がある。

 呪具などの道具製造を得意とするじよういん

 守りを得意とするさんこうろう

 攻撃を得意とするかど

 呪いを得意とするよう

 ちなみに一ノ宮はオールラウンダーだ。

 同じ五家とくくられていても、強い術者を多く抱え込んでいる一ノ宮の家は他家よりも発言力が強かった。

 それ故、一ノ宮の管轄内に術者協会本部が置かれ、本部には二条院が作った危険な呪具などが保管されているのだ。

 ただ一ノ宮の管轄内とはいえ、協会は五家によって作られたものだ。

 その管理は五家によってなされており、すべての支部をまとめる本部にはどこよりも強固なセキュリティーが施されていた。

 それは二条院が作った呪具を護るという意味でも特別厳しくされていたのだ。それなのに……。

 ある日、協会本部に侵入者があった。

 どうやって厳重な守りを突破したかは分からない。

 けれど、侵入者を知らせる警報が本部内に響き渡り、本部にいた術者達は右往左往しながら侵入者を探す。

「どこだ! どこに行った!?」

「監視カメラはどうした?」

「出入り口を閉じるんだ!」

「先に機密保管庫を確認しろ!」

 怒声が響き渡る中、術者達は本部の中で最も重要とされている保管庫に向けて走った。

 しかし、複数の術者がそこにたどり着いた時には、本来なら厳重に閉じられているはずの保管庫の扉が開いていたのだ。

 顔を青ざめさせる面々。

 まだ中に侵入者がいるかもしれないと、応援を呼び、警戒しながら保管庫の中を確認する。

 しかし、そこには不審者の影はなかった。

 一見するとなにも盗まれていないように見えたが、一つ一つ確認していくと、いくつかの呪具が消えていた。

 最悪なことに、呪具の中でも特に危険とされていた呪具ばかりが。

 られたものは特に慎重に管理されていた呪具だったのだが、荒らされた形跡はなく、まるで置いてある場所を知っていたかのように他の呪具には目もくれず、それらだけを奪い去っていったようだった。

「なんてことだ……」

「よりによって呪具が盗まれるなど大失態だ」

「いったいどうやって盗んだんだ?」

 駆け付けた術者達は困惑したまま立ち尽くす。

「こうしてる場合ではない」

「ああ、すぐに五家の当主にお知らせするんだ!」

「まだそう遠くには行っていないはずだ! 人員を投入して侵入者を探せ!」

 我に返った術者達は、各々がやるべきことをすべく行動に移す。

 しかし、呪具を盗んだ侵入者を見つけることはできなかった。

 その時、保管庫を調べていた術者の一人がなにかを見つけ、手に取る。

 それはある模様が描かれたボタンだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る