トラック運転手ですが世界平和の為に殺し屋に転生してみましたよ

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054898105775 

 最初の転生から先を書いてもらいました。



 俺はしがないトラック運転手。だが世の中には俺達が荷物を運ばなければ困る人達が沢山いる。物流の仕事が止まるという事は、即ち経済が止まるという事だ。俺は自分の仕事に大きな誇りを持っている。


 しかし、昨今よく見る小説や漫画、アニメの類の多くは主人公が『トラックに轢かれて死に、そして神から強力な力を受け取って異世界に転生して活躍する』といった話だ。


 異世界に転生するのは良い。その為に死んでしまうのも仕方がない。だが何故みな揃いも揃って『トラックに轢かれる』のだ?


 日本の道路事情はそれ程までに乱れているのか? そうじゃないだろう?! トラック運転手はみな居眠り運転をするのか? そうじゃないだろう?!

 むしろそんな不幸なドライバーはヘンテコな当たり屋の被害者と言えはしないだろうか?!


 世のトラック運転手の皆は『事故が無いように』と細心の注意を払いながら毎日毎日ハンドルを握っているんだぞ?!

 これはもうトラック運転手という業種に対する風評被害に他ならない。一度協会を通して一言ひとこと物申した方が良いのではないだろうか…?


 などとボンヤリと考えながら車を走らせ、とある横断歩道に差し掛かる。信号はこちらが青だ。

 突然俺の前に1人の人物が現れた。無造作に、赤信号の横断歩道に足を進めたのだ。


 咄嗟にブレーキを踏む俺、しかしとてもじゃないが止まりきれる距離じゃない。荷台に荷物を満載している今の状態なら尚更止まらない。このままではこの人物を跳ね飛ばし、業務上過失致死傷の現行犯で俺の人生が終了する。


 刹那の時、俺の時間が加速されたような感覚に包まれる。俺は今、目の前に現れた男をじっくり観察する余裕が生まれた。


 その身長は180センチ程、筋骨隆々とした体格で、どこぞの世紀末救世主みたいな険しい顔つきをしていた。

 その背中には黒いランドセル、白いポロシャツにタータンチェックの半ズボン、同じ柄のズボン吊り、黄色い通学帽子という出で立ちがそのアンバランスさに拍車をかける。


 こいつは何だ? 大人なのか? 子供なのか? そもそも人間なのか?!


 そいつが右腕を肩の高さまで上げ、拳を握る。その拳がトラックの中央に刺さり、トラックの運動エネルギーに後押しされてトラックが中心から二分される。


 左側がポッカリ空いた運転席から俺は奴の胸に光る名札を見つけた。そこには『2ねん4くみ だいごういん』と書いてあった。


 そっかぁ、小学生だったのかぁ……。


 2つに分かれたトラックの車体は、左側を歩道に突っ込ませ、俺の乗る右側は前方に停まっていた別のトラックに突っ込んだ。

 その2つともが大爆発を起こし、死傷者が40名を超える大惨事となった。


 上空から現場を見下ろしている俺。恐らく死んで魂が浮いている状態なんだろう。


 炎に包まれて阿鼻叫喚の現場から1人の男が歩み出て来た。さっきの『だいごういん』くんだ。

 荷物を満載した4トントラックと衝突した彼だが、死亡どころか負傷すらもしていない、ちょっと煤けているだけの様に見えた。


 悠然と歩みを進めながら「何人なんぴとたりとも我が道をはばむ事あたわず」と呟く。


 信じられない気持ちでその言葉を聞きながら、俺の魂は天に召されていった……。


「何なんだよ?! あの出鱈目なガキンチョは?!」


 目の前に現れた『神』と名乗るオッサンに俺は食って掛かっていた。

 あの『だいごういん』とかいうガキ、異能とかチートとか言うレベルじゃねー! 素手でトラックを真っ二つに引き裂いたんだぞ?


「あー、彼は『大豪院だいごういん 覇皇帝かいざあ』くんと言ってね、それはもう究極に選ばれし人間なんだよ。まだ8歳なのにそれはもう人間離れした威厳があってねぇ…」


 あれで8歳とかマジかよ…? 「何人なんぴとたりとも我が道を阻む事あたわず」とか絶対どう考えても子供の台詞じゃねぇだろ、世紀末覇王かっつーの!!


「実は今、我々の抱えている問題解決に彼の力が是非必要なんだけど、彼が死んでくれない事にはその世界に送り込む事も出来なくてねぇ…」


 オッサン曰く、とある世界に強大な魔王軍が誕生し、幾つもの世界を飲み込んで滅ぼそうとしているらしい。

 それに対抗するべく勇者を何人も送り込んだが、ことごとく魔王軍に敗れ、勢いを止めるどころか逆に活気づかせてしまったそうだ。


 この苦境を打破するべく、勇者の中の勇者たる大豪院覇皇帝を転生させて送り込もうという作戦が計画された。

 転生させる為にはまず死んでもらう必要がある訳だが、その第一弾として『トラックをぶつけてみてはどうだろう?』となった。


「なるほど、その過程で罪も無い無関係な俺が巻き込まれて殺された訳だ? オイコラ神!! どうしてくれんだよ?!」


「…君には本当に悪い事をしたと思っているよ。そこで君には通常1つしか与えられない神の力を2つ授けて転生させてあげようと思うんだ。新しい世界で俺ツェーだのウッフンハーレムだのを十分楽しんでくれ給え」


 申し訳なさそうに頭を下げるオッサン、むう、死んじまった事はどうしようも出来ないから、これからの事を考えるなら悪くない提案ではある。しかし……。


「なぁ、1つ確認なんだが、俺が送られる世界ってもしかして、例の魔王軍に滅ぼされかけてる世界じゃないよな?」


 俺の質問にさり気なく目をそらすオッサン、クソが! はいノーカン!

「ふざけんなよ! 今まで何人も勇者が返り討ちされてる様な世界で楽しめる訳ねーだろ! 他の場所にしてくれよ!」


「ほ、他の場所は私の管轄外で、しかも人間の魂が飽和しててね。虫とか魚なら頼んで転生させてあげられるんだけど…?」


「いーわけねーだろ! 何が悲しくて虫や魚の身分で俺ツェーしなきゃなんねーんだよ?!」


 オッサンは脂汗が止まらない。

「そ、そうは言っても神様にも出来る事と出来ない事があってねぇ…」


 俺は大きく息を吸って、大きく吐き出した。

「分かった! んじゃあ俺がその大豪院ってガキをぶっ殺してやる! そいつを転生させて勇者にすれば沢山の世界が救われるんだろ?」


「…あ、あぁ、その通りだが…」


「ならば俺を記憶を持たせたまま現世に転生させろ。それと自在に武器を調達出来るチートを寄越せ。幾ら超人でも油断している所を銃撃されればイチコロさ!」


 オッサンは眉毛をハの字に顰めて考え込んでいる。

「そ、そんな事を許すわけには…」


「どうせまた他の誰かがヤツの犠牲になるだけなんだから、事情を知っている俺が手を下した方が早いだろ? それとも同じ過ちをまた繰り返すのか?!」


「……………」

 目を閉じ口をつむぐオッサン、激しい葛藤が外から見ても窺われる。


 そして決意と共に目を開けたオッサンは俺の顔を見て微笑む。

「分かった、君に任せよう。ぜひとも大豪院覇皇帝の魂をここまで導いてくれ給え。成功した暁には君には先程の条件に加え、君の望んだ世界に転生させて上げると約束しよう…」


 その言葉を聞いた瞬間、辺りが暗くなり俺の意識も暗闇に飲み込まれた……。


 ─────────────────────


 「……ここは何処だ? 確か俺は死んだ筈じゃなかったか……?……ッ?!」

 俺は突然の頭痛に襲われその場に倒れ込んだ。

(何だコレ? まるで脳味噌に直接針を突き刺されたみたいだ……)

 暫くすると痛みは治まったが、代わりに頭に何かが流れ込んで来るような感覚を覚えた。

「何だこれ? 俺の記憶なのか……?」

 流れ込んできたのはこの身体の持ち主である大豪院覇皇帝の過去だった。

 彼は8歳の時に両親を失い、それから親戚の家に引き取られたが、そこでは酷い虐待を受けていたらしい。

 覇皇帝の容姿が災いし、養子先での扱いはそれはもう酷いものだったようだ。

 食事も満足に与えられず、毎日のように暴力を振るわれていた。

 そんなある日、近所の子供達と遊ぶ際に、彼等が持っていたゲーム機が欲しかった覇王は、偶然通りかかった大人に『買ってくれ』とせびった。

 勿論、大人の答えはNOだったが、その態度に腹を立てた覇王が、無理矢理その腕を振り払うと、子供の一人がバランスを崩して車道に飛び出てしまった。

 運の悪い事にそこに大型トラックが突っ込んで来た。

 結果、覇皇帝はその子供を庇って轢かれてしまい、即死したそうだ。

「何だよそれ、完全に自業自得じゃねーか……」

 その後、覇王の魂は神によって回収され、彼の望み通りに異世界へと転生する事となった。

「お、おい、こっちの世界には銃なんて無いよな?」

「大丈夫、この世界では魔法があるから」

「マジか! ヒャッホー!!」

「但し、魔力の無い人族だと生活魔法のファイアすら使えないけどね?」

「…………」

「因みに私は女神だから使えるよ?」

「クソがぁぁぁぁ!! 何で俺がこんな目に遭わなきゃなんないんだよ! チートくれよチート! あとついでに金も!!」

「まぁそう言わずに頑張ってよ。転生先は君が望むように設定してあげるからさ」

「チクショウ! 今度こそ勇者になってハーレム作ってやるからな! 覚悟しろよ!」

 こうして俺、大豪院覇皇は新しい世界で第二の人生を歩む事になったのであった……。

 ───

「……で、ここが俺が産まれた国だって訳だ。分かったか?」

 俺の話を聞き終えたクラスメイト達は、一様にポカーンとしている。

「いやお前何言ってんの? 頭おかしいんじゃねーの?……て言うかさっきから気になってたんだが、お前本当に大豪院なのか?」

「当たり前だろ? 何を疑ってんだよ?」

 俺は眉間にシワを寄せながらそう答えると、クラス中がざわつき始めた。

「えぇ? でも見た目が違うし……」

「それになんか雰囲気も違う気がする……」

「でもさ、あの大豪院の話し方ってさ、もっとこう偉そうな感じだったよね?」

「うん、いつも俺様口調でさ、俺の事を『覇王たる者』とか言ってたもんね」

「うっそ? 大豪院が僕達に敬語を使う日が来るなんて……」

「そんな事よりさ、ステータス見せてくれよ!」

「あ、そうだね、じゃあ見てみよう!」

 みんなが俺のステータスを確認している間、俺は一人、窓の外を眺めていた。

 俺の身体を乗っ取ったオッサンが言っていた事が本当なら、きっと俺にもチート能力が備わっている筈だ。



 ☆ちありや寸評☆

 え? なに? 「転生したら大豪院だった件」みたいな?www 色々カオスすぎるだろw

 設定もブレブレだしこれは30点。

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