第19話 奈落

混乱をしている冒険者のアイを見ながら、孤独王が質問をする

「ヒサギに触れた後に、お前は何をした?」

アイは

「ヒサギに触れている間は、空の上から鬼を見ていた」

「ヒサギが困ってるように見えたので、肩を押せと助言したよ」


「意識の共有があるのか?」

孤独王は整理しながら説明をした。


「ヒサギは、人に触れている状態で女神の力を発揮しているな」

「特にアイ、お前と触れていると発動している」


アイは混乱しながら

「女神の力はヒサギが使うんじゃないのか?」

孤独王は

「ヒサギは触れた相手と意識を深くつなげる事で、

 力を使えるのかもしれない」

孤独王は、推測だけ話すと南の穴へ急がせた。


奈落はそれほど遠くなかった。

低い丘の真ん中に穴が空いている。

大きな漏斗のような形で、底まで歩ける道が出来ていた。

この底の穴に落ちると、地獄へ行ける迷信がある。

実際は底が見えないだけで、悪魔などは出てこない。


「この下にある穴から、封印の箱を落とせばいいのかしら」

私が怖そうに下を見ていると、足下に銃弾が撃ち込まれた。

孤独王は「アイとヒサギは、そのまま下へ走れ」

銃を取り出しながら、応戦を始める。


アイは私の手を握る、時間が止まり世界を空から見ている。

銃撃しているのは女神を憎んでいるガン=シヨク=ガヨクだ。

手下を何人も連れて待ち伏せをしていた。


ガヨクからすれば、箱を取り返しアイと私を殺せば

女神への復讐の一歩になるのだろう

その執拗さを、私はまだ理解できない。


「ヒサギ、奈落まで飛べるか?」

アイも同じ景色が見えていると思える

「穴のそばまで飛び降りてみる」

ちょっと勇気がいるが、アイといると怖くない

私は穴の近くまで飛んだ


近くまでと願ったのに、なぜか穴に向けて落ちていく。

「アイ、止められない」

私は無意識で、悲鳴を上げていたと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る