第18話 第五の目
石の山に見えた鬼は立ち上がると、人の背丈の二倍はある。
顔に目が五個ついている、この重量では冒険者のアイ達では
歯が立たないだろう。
私は見えない手を使おうとした。
前回のように、高次元の世界に意識を集中する
「なにも起きない」
私は、見えない手が使えない理由がわからない
「ヒサギ、こっちに来い」
アイが私の手を握る、暖かくやわらかい手の感触を感じると
意識が広がる。
岩はアイと私を掴もうとしている。
私は前回のように、鬼に力を加えようとしたが動かない。
「女神の力がまだ足りないの?」
力ではなく「つながり」を切ろうとした。
アイに刺さった槍を砕く方法だ。
でも岩はとても「つながりが強い」ため、切る事ができない。
「ヒサギ、鬼の肩を前斜めの方に力を加えて」
アイの声が聞こえる
試しに鬼の肩を押すようにすると、楽に動かせた
アイは私の手を引いて鬼から逃げる
ずしんと大きな音を立てると、鬼は横倒しになる。
腕を使って起き上がろうとすると、肩から岩が崩れ始めた
鬼はそのまま土煙を上げながら、ばらばらになる。
「倒せたな、ヒサギは大丈夫か?」
アイは私の手をしっかり握りながら、私を見ている。
とても長く見ているので不安になり始めた
「あの、もう大丈夫よ」
アイの手を離すのが悪い気持ちと
手を握ったままの状態の不安さで、私は混乱した。
「おいもう手を離していいだろう」
タイガーが、アイの腕を掴んで離そうとした。
「アイは俺が守る」
タイガーは、掴んだ腕を離すと
「どうした?大丈夫か?」と心配そうに見ている。
孤独王が「もう手を離せ、ヒサギが困っている」
その冷静さで、アイは自分の行動の不自然さに気がついた
「ごめん・・」
アイは自分でも判らない様子に見えた。
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