第12話 仇敵

鬼に刺された冒険者のアイは崩れ落ちる。

ほぼ致命傷に見えた、私は叫びながらアイを抱きしめた。

「女神の力は見えない手だ」

アイの言葉を思い出す、見えない手?どうすれば動かせるの?

誰か教えて!


その瞬間に時間が止まる、私は私を見下ろしている。

天井近くに浮いている私は、槍を抜こうとしている私が

危険な行為をしているのが判る


そのまま抜けば、肺を傷つけるだろう。

私は浮いたまま、その槍を手に取ると槍を構成している「つながり」を外す。

ばらばらになる槍をアイの体から取り除くと、槍が空けた穴を塞ぐ。

少しは痛むだろうか?


私は痛そうにしているアイの頭を抱きながら、泣いていた。


「この娘は女神なのか」

鬼は部屋の奥まで下がると、窓から逃げようとした。

孤独王が、胸元のハンドガンホルスターから銃を抜く。

回転式の銃の口径はかなり大きい

鬼の胸元にすべての弾をたたき込む。


「アイは大丈夫か?」

孤独王がアイの傷を見ている。

「傷は治っているな、ヒサギが力を使ったのか」

私は泣くことしか出来ない。


「おい誰か来るぞ」

獣人のタイガーが古道具屋の入り口を見ている。

シヨク=ガヨクが入ってきた。


「なんだアイはまだ生きているのか」

非情な顔は、アイがまだ死んでいない事を本心から残念に感じている。

アイが「もう大丈夫だヒサギ」起き上がると

「ガヨク、お前が箱を盗んだのか?」

彼をにらみつける。


「まさかクァシンが買い取るとは思わなかった

 古道具屋のじいさんは相場も知らんのか」

ガヨクがアイに恨みを持っているのは、全員が知っている。

しかし、ここまで画策するとは信じられない

下手をすると街を破滅させてしまう。


私は「なぜここまでするの」もう涙があふれて

よく見えない

私はこんなに泣き虫なのか、情けなくてもっと泣けてきた。

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