第6話 孤独王からの求婚
クァシンを船に乗せて水没した町を出た。
「ヒサギは疲れていないのか」
冒険者のアイは、こまめに私の心配をしている
そんなに弱く見えるのだろうか
ちょっと心が痛む
「ええ大丈夫よ、でもクァシンの具合は良くならない」
呪いが取り憑いてるのか
クァシンは、徐々に元気が無くなる
「そろそろ向こう岸につくぞ」
孤独王は、器用に船を動かしている
こんなに上手なら仕事すればいいのにと、少し考えた
「孤独王さんは、どこかで働かないの?」
思わず口に出してしまう
人に向かって働けと言いながらも、私は親の遺産で食べている
両親が事故で死んでからは、家のなかで過ごしていた
クァシンと墓場の女神と出会ってからは
少しはやる気が出ていたのに。
「俺は王様だからな、働かなくて問題はない」
孤独王は、当然のように言うが、疑問をまた口に出してしまう。
「でも王様も、お仕事すると思うわ」
孤独王は、私を見ると「ふむ、お前もかわいいな、妃にならないか?」
いつもの台詞だ
彼は、町でも女性を見ると結婚の約束をする
はじめは、彼の美男子ぶりにちやほやされたが
女性とお付き合いする気が、まったく無いのだ
誰にでも同じ事をするため、町の女性は挨拶程度と解釈している。
でも私はそれも疑問に感じた
「お妃さまが、欲しいのなら一人だけを愛さないと」
恋も知らない私が言う台詞なのだろうか
だんだんと自己嫌悪になる
孤独王は、そんな私を横目に見ながら
「一人しか愛せない世界はさみしいな」
とつぶやく
私は、その言葉の意味を理解できない。
女性を一人だけ愛するのが怖いのかもしれない。
理由を知りたいが、クァシンの具合を見ていると
気が散ってしまう。
クァシンの頭をなでながら、「頑張って」と声をかける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます