第4話 第一の目

ヒサギはクァシンの家まで急いだ。

洪水がどの程度なのか、判らないが病人の状態では逃げられないだろう。

心配でたまらない。


「ヒサギ、どうした」

見るとアイが居た。

「アイはどうして、ここに居るの?」

私はてっきり大樹に居ると勘違いをしていた。

アイは冒険家として活躍している。

無償で働くことも多い。


「クァシンが病気だと手紙が来たんだ」

なるほど祖父母が、連絡したのか


「洪水らしいの、クァシンを移動させないと」

「判った、大八車を借りてくる」

大八車は、二輪の木製の台車だ。

荷物を運べる


クァシンを連れて毛布を持ってくると大八車に乗せた。

アイがそれを引っ張りながら高台を目指す

祖父母もついてきているが、後ろから叫び声が上がる。


「オニだ」

アイが振り返る。

「ヒサギ、悪いが引っ張ってくれ」

大八車を渡されて、焦る。

なんとか引っ張りながら進むが、アイは戦う気か。


「クァシンじゃないか、病気なのか、よし俺が引っ張る」

近所の人達がクァシンの状態を見ると手助けしてくれた

さすがに私では、長くは引っ張れない。


アイが心配になり彼を追った。

「ヒサギ、来るな」

川の水が町に流れ込んでいる、その先頭に鬼が居る

土蜘蛛のように見えるが大きさが馬くらいだろうか。

重そうな体を、長い八本の足で支えている。

足の先はするどく尖る爪がある。


蜘蛛と違うのは、大きな目が一つだけな所か。


アイが、腰から二本の棒を取り出すと、ねじって

一本の棒にする。

棒の先頭に刃をつけると、槍のように見える。


しかし鬼の体からすれば、針みたい頼りない武器だ

だが弾力があるのか、折れそうにない。


アイは気合いを入れると「エイッ」っと

槍をしならせると、鬼の足が飛ぶ

そのまま片面だけ、足を飛ばした。


体は支えられずに鬼は、横に転がる

「ギィィィィ」と声を上げると口から、針を噴き出す

地面に骨のような針が何十本も刺さる。


アイには届かず、転がる鬼の目玉に向けて槍を突き刺す。


そのまましならせると、目から頭頂に向けて切り裂いた。

鬼を倒したアイは、走ってくると私を心配してくれる。

「大丈夫よ」

最初から予感していた、『勇者のカード』が彼なのだろう。

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