第8話 野菜を売った
大学生の時、一日だけやったことがある仕事。
1つは都会の広場で野菜を売れと言われて売り子をやったことがある。
変な怪しげな友人がいて、そいつは学生の頃からブローカーみたいなことをしていた。何だかその筋の人とも面識があるような雰囲気だった。一時は風俗関係の店のマネージャーみたいなこともしていた奴だった。そんな奴が持ってきた仕事だからいかがわしい雰囲気がしていた。けどその筋の人が野菜なんて扱うのかな?
昼過ぎに四角い公園の真ん中に四角にテントを張り、組み立て式のテーブルを四角に並べてその上に色んな野菜を置いていた。
僕は大根を売れと言われた。
買いに来る人なんているんだろうかと思っていたが、開場する前には広場の入り口のところに主婦という雰囲気のおばさんたちが行列を作っていたのでちょっと驚いた。
おばさんたちは品定めをしながら進んでくる。僕の前に眼鏡をかけた痩せた口うるさそうなおばさんが立ち止まった。大根を人差し指で突っつくと言った。
「この大根安くないじゃない。うちの近所のスーパーの方が安いわ!」
僕は言った。
「ならそこのスーパーで買やあいいじゃないか」
おばさんはびっくりした顔で僕を見るとすすっといなくなった。
しばらくしてこんどはかなり肥ったおばさんが立ち止まった。
おばさんは言った。
「この大根柔らかいの?うちの近所の八百屋さんの大根は柔らかいのよ」
僕は言った。
「その大根腐ってんだよ。腐ってんの食べてちゃだめだよ」
若い会社の男が僕の肩を掴むと後ろに引っ張って「君は売らなくていい」と言った。
売り始めて30分経たずに首になった。
おばさんは苦手だ。というだけのお話でした。
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