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一色 サラ

おじいちゃんの忠実

 「僕は忠実でしたか。お母さん」 

おじいちゃんが、仏壇に向かって話しかけてる。私にとって、ひいおばあちゃんのことだ。

 日曜日の朝5時に渋谷の込み合ったスクランブル交差点と渡った先にある忠犬ハチ公の銅像に行って帰ってきたおじいちゃんが仏壇に手を合わせていた。

 おじいちゃんが生まれた1934年に渋谷に忠犬ハチ公は建てられた。それもあってか、おじいちゃんは小さいころから『人に忠実でいなさい』と言いれていたそうだ。


「じゃあ、ゲートボールに行ってくるよ」

おじいちゃんが家から出かけて行ってしまった。もうすぐ88歳もなるのに元気だ。コロナ前だった時は、毎週のように公園で行われているゲートボールに参加しに行った。

 今日は1年越しに、久しぶりにゲートボールが行われるそうだ。なかなか出歩けなかったが街の人達が試行錯誤して対策を行なって開催されるらしい。

「家に居たら、私たちがリラックスできないことを気にしてるんだと思うのよ」とお母さんが食器を洗いながら言った。

「でも気にならないの?」

「おじいちゃんなりの忠実なんじゃない」

「そうなの…忠実ね。あれが…」

「あれがよ。芯は真面目だからね。わがままぽく見るけど、ちゃんとした人ね」

いつのまにか、お母さんは食器を片づけたようで、私のいるダイニングテーブルにやって来た。

「おじいちゃんさ、コロナ化の時、よく本を読んだり絵をかいたりとかして、ぼけ老人みたいに一日中をボケっーと過ごすことはなかったのよね。」

「そうなの」

「なんか真面目に、尊敬したのよね」

私も40歳になって、旦那のお父さんのことを考えた。旦那の実家に帰った時、ボッーとテレビを観ていた。

「ボケない対策とかかもでけど、元気なうちは、おじいちゃんも充実した日々をすごしたいんじゃない」

 

なんとなく、私はおじいちゃんがいつも怒っていて、忠実な人なイメージはなかった。でも、お母さんは違ったみたいだ。これが距離感の違いかもしれない。 

 

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