第15話限界突破

その時身体はボロボロで見るも無惨な姿で立ち上がるどころか指一本すら動かせないはずなのに不思議と身体が動き、それどころか身体の内から抑えきれない程の新しい力が湧き上がるのを感じていた。


 「…ほぅ、もはや身動きすらとれず死を待つだけのはずがまさか再び立ち上がるとは不思議な事もあるものだ。まぁいいでしょう、もう飽きたので先に貴方にとどめをさしてから他の人間を始末するとしましょう。では、さような グシャッ」 


最後の言葉を魔神が言い終える前にクロードは魔神を殴り飛ばしていた。

殴り飛ばされた魔神は何が起こったのか理解出来ず、というより自身が殴られた事さえ理解出来ずにいた。


 「ば、馬鹿な、な、何が起こったのだ?何故私が倒れているのだ?」

 

魔神にとして生を受けてからEX級の怪物以外に吹き飛ばされた事もましてやただの一撃で立てなくなった事など彼の記憶には存在しなかった。故に混乱した。恐怖した。


 「誰だ?何処から攻撃している?」


 「口調が変わっているよ魔神さん?」


魔神にはそう言いながら目の前に立つ存在を理解出来ない、正確には理解したくない。

何故なら目の前にいるのは先程まで自身が弄んでいた矮小な存在だったものだったからだ。


 「馬鹿なたまたま何者かの掩護を受けただけで調子にのるなよ?貴様如き虫ケラではこの私に触れ メキャ」


魔神はまた言葉を言い終える前に蹴り飛ばされた


 「…ば、馬鹿な?そんなはずが…う、動く事さえ出来ない程のダメージだと?何を、貴様一体何をした?」


 「口調が崩れているというよりはそれが素のようだね?少しでも自分の思い通りにいかないと癇癪を起こすタイプかな?まさか自分が不利になると物事すら理解出来なくなるなんて見栄だけ張ってても中身が追いついていないみたいだね?」


 「き、貴様〜、虫ケラの分際でマグレで調子づきやがって、貴様如き今すぐ殺してやる!」


 「…動く事さえ出来ないのに?どうやって?」


自分が自分でない様に売り言葉に買い言葉を繰り返してしまう。

(まるで全能感に酔っているようだ。駄目だ!意識をしっかり持て!少しでも気を緩めると全てを破壊してしまいそうだ。力に振り回されるな!…クソ、意識が…)


意識を無くしてしまったと感じた瞬間僕はまたあの空間にいた。


 「久しぶりですね、クロード。」


 「ソニア様、もしかして僕は…」


 「まだ貴方は何もしていませんよ。貴方の意識が飛ぶ寸前に此方に呼び寄せましたので。」


 「そうなんですね、お手数おかけして申し訳ありません。しかしこれから僕はどうすれば…」


 「その為に貴方を呼び寄せたのですよ。以前に私が言った事を覚えていますか?」


 「加護についての事でしょうか?申し訳ありませんでした。自分ではどうしようもない状況で他にどうする事も出来ず且つ今なら限界を超えられるのではと慢心してしまいました。その結果がこんな事に…」


 「クロード貴方は思い違いをしています。たしかに以前私は今の貴方では加護を活かす事は出来ないと言いましたがあれは自身の成長不足だけという意味ではなかったのです。」


 「それはどういう事でしょうか?」


 「【管理神の加護】の限界突破は自身の成長はもちろんですが私自身が貴方を見極め最後の鍵を外さない限りは使い熟す事は出来ないのです。今回貴方はそれを無理矢理こじ開け様としたので所謂暴走状態になりかけていたのです。しかしそれも自身の為ではなく護りたいものを護る為に心の奥では不可能と理解しつつも無理矢理加護を発動させてまで大切なものを護ろうとしました。現在の貴方なら力と心どちらも十分な資格があります。今貴方の加護の最後の鍵を開きましょう。魔神の力はたしかに驚異ですが現在の貴方ならEX級とも互角以上に渡り合えるでしょう。それでは今度こそ貴方と話すのは本当に最後になるでしょう。どうかあの娘の世界をよろしくお願いします。」


 「はい。ありがとうございました。ソニア様と貴方の妹に誓って必ず。」


 「ありがとう、さようなら。」


そして再び僕の意識は途絶えた



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る