第10話
「それじゃあそろそろ出発するけれど準備はいいかいクロード?」
「はい、大丈夫です父上。母上達へのお土産も買い終えましたので問題ないかと。」
「うん、ソレを忘れて帰るとユリアに怒られちゃうからね。」
国王との謁見を終え何故か婚約も決定し僕達は公爵領に帰る準備をしていた。
「最後に兄上とカノンに挨拶をしたら出発するとしよう。」
そう言って国王の部屋に向かって歩いているとクリスさんが近づいてきた。
「失礼いたします、アルカナ公爵様。少しばかりクロード様とお話させていただいてもよろしいでしょうか?」
「もちろん大丈夫だよ。それじゃあクロード、僕は先に兄上の所に行っているからね。」
「エッ、わ、わかりました。」
そう言って父上は笑顔で陛下の部屋に向かった。
「えっと、それでクリスさん。話というのは何でしょうか?」
「……わ、私と婚約していただけませんでしょうか?」
「………ハァ?」
「ウッ、や、やはり駄目でしょうか?」
「イヤイヤ、駄目というかなんでいきなりそんな話になっているのでしょうか?」
クリスさんがモジモジしながら
「そ、それはクロード様が私よりも強かったからです。私は自分より強い人と結婚する事を夢みていました。そして今まで腕を磨きこの国で1番の戦士と呼ばれるまでになる事ができました。しかしそんな私をクロード様はあっさりと負かしてしまいました。まさか私にこんな出会いが訪れるとは思いもしませんでした。と、年は少し離れていますがこんな私を貰っていただけませんでしょうか?」
矢継ぎ早に話をするクリスさんに圧倒されながら
「えっと、く、クリスさん。少し落ち着いて下さい。僕はまだ5歳ですし婚約とかはまだ早すぎると思うのですが…」
「しかしクロード様は既にカノン様と婚約されているではありませんか?それなら私とも「ち、ちょっと待って下さい。」…」
「なんでクリスさんがその話をご存知なのでしょうか?」
「それはもちろん陛下からお聞きしているからです。そして陛下とカノン様、そしてアルカナ公爵様からも第2婦人になってもいいと御言葉をいただいております。そういう事ですのでよろしいでしょうか?」
(へ、陛下ー!何勝手に話進めてるんですか?というかカノン様と父上まで一緒になって何やってるんですか?さっきの父上の笑顔はこういう事だった訳ですか?)
「…い、いやしかしクリスさん「よろしいですよね。」……ハイ…」
(コワイよクリスさん!め、目が、笑顔のハズなのに目が笑ってないですよ?)
「嬉しいですわ。それではこのまま一緒に陛下に報告にむかいましょう。」
「………ハイ、そ、そう…ですね。」
そして僕達は陛下達の待つ部屋に向かった。
「おや、どうしたんだいクロード?まだ5歳なのにそんな人生に疲れ果てた様な顔をして?」
「…陛下、わかってて言ってますよね?立て続けにコレで悩まない人はあまりいないと思いますが?」
僕が恨みがましい目で陛下を見るとカノン様が
「クロード様は私達との婚約が心労になる事であると仰られるのでしょうか?」
「そんなはずはありませんですよね、クロード様?」
目が全く笑っていない2人の笑顔に対して僕は
「そ、そんな事ある訳ないじゃないですか。嬉し過ぎて逆に表情が消えているだけですよ。ハハハ…」
それしか返せませんでした。
このまま尻に敷かれる未来しか見えません。
「そうか、そうか。クリスの事も認可されているようで安心したよ。カノンにとってクリスは実の姉の様な存在だからね、もしクロードに認めてもらえなかったらどうしようかと考えていたんだよね。いや〜何事もなくて良かったよ。」
(いや陛下?その言い方ですともし駄目だった場合何かされる予定だったという事ですよね?全く安心出来ないんですけど?)
「さて、それじゃあこれで必要な事は全て終わったし帰るとしようか。」
「…そうですね、父上。そろそろ帰るとしましょう。」
そう言って恨みがましい目で父上を見ているが本人はどこ吹く風だ。
(この似た者兄弟は危険だ。おっとりとした顔の裏でどんな事を考えているかわからない。次からは細心の注意を持ってあたらないと)
「それじゃあ、ユイシス、クロードまたいつでも遊びに来てね?」
「クロード様、修行頑張って下さいね。偶には遊びに来て下さいね。」
「クロード様、次は私ももっと修練を積んで強くなっていますのでまたお相手お願いいたします。」
2人は恥じらいながらそう言ってくれた。
1人は恥じらいながら言うセリフではない気もするがと思いながらも僕は
「はい。カノン様またお会い出来る日を楽しみにしています。クリスさん僕も修行してもっと強くなれる様に頑張ります。それでは陛下、カノン様、クリスさん失礼します。」
そう言って僕達は公爵領に向けて出発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます