第5章 理想の人と秋
私はずっと部屋の中にいる。いつも同じような服装で居られるのはこの部屋が快適な温度に設定されているせいだ。そういえばここに来る時に持ってきた荷物はどこに行ったのだろう。そもそも荷物なんてものはあったのだろうか。そんなことを考えていたら、葵が部屋に入ってきた。
「春来!今日は何する??」
今日も何もしないよ。ここでじっとしてるしかすることないよ。面白いことなんてないし。
「面白いものは自分で見つけるんだよ春来。」
葵がそう言ったから私は碧の頭に手を置いて口パクで『みつけた』と言った。
「俺も」
そう言って葵も私の頭に手を置いた。
「あ、でも春来、今日はやる事あるよ。」
え?なにするの?
「ほら!春来がやりたいって言ってたこと、まだあるよ」
あるけど、花火見てからそんなに経ってたっけ?
「そんなこと気にしなくていいんだよ!ほら!」
そう言って葵は病室のカーテンを思い切り開けたのだ。そこには、綺麗なオレンジが窓いっぱいに広がっていた。葵は窓を開ける。その時、ビューっと強い風が吹いた。私は咄嗟に閉じた目を開くと葵が私の目をじっと見ていた。
「綺麗だね春来。ほら!これ、本に挟むんでしょ?」
葵がわたしに手のひらくらいのおおきなもみじの葉を渡す。あ、でも私本なんか、
「何言ってるの?春来、本ならここにあるよ。」
あ、そうだっけ、私本持ってきてたんだ。葵は私『花空』と書いてある本を手渡した。私はその本にもみじを挟む。
「これでまたひとつ春来がやりたかったことが叶ったね」
私があの時、ふとこぼした希望を叶えてくれる理想の男の子。彼は一体私のなんなんだろう。私のことをどう思っているのだろうか。
「春来の事大好きだよ」
ずるいよ葵だけ私の心読んで。
「しょうがないよ聞こえるんだもん」
まあ、そうだよね。じゃあ葵は私のどこが好きなの?
「全部好きだけど、顔が好き。」
言うと思ったよ。私も葵の顔好きだよ。
「知ってるよ。」
そう言って2人で笑った。
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