友達っていいな

【人と連絡が取れない】


私はもともと、連絡があまりマメな方ではない。仲が良い友達には特に。

突発的に送られてくるちょっとしたやり取りなら、人を問わず気軽に返せる。だけど、ずっと続いているような、取り留めのない話が苦手だった。文章は良くも悪くも伝わらない部分が必ず出てくるし、そういう話は直接話した方が楽しい。なんて返せばきちんと伝わるか、なんて返せば会話が弾むか。無意識に考えすぎていたんだと思う。直接会った時のように、軽やかに会話を楽しむ余裕は私にはなかった。

そうして、やっと送った文章にすぐに既読が付き、すぐに返事が送られてくる。「メール」というツールを主に使っていた私にとって、時代の進化は迫ってくるような感覚をもたらした。柔軟に物事を捉えられたら良かったのだが、私の中で「画面上でのやり取り」は、あくまで会話とは別物として存在していた。


次第に恐怖心からか、誰とも連絡が取れなくなった。送られてきた文章が全く理解できない。送る文章が全く思いつかない。症状は確かにそこにあって、私の日常に静かに広がっていた。


幼少期の出来事から上辺だけの付き合いが大嫌いだった私は、どこまでも狭く深くという付き合いを好んだ。なかなか自分をさらけ出せないし、裏切られる恐怖から無意識になるべく信じないようにしようとも思った。今考えてもなんて嫌な奴なんだと思う。こんな私と仲良くしてくれる人に、改めて深く感謝したい。だけど同時に、心を許した人にはどこまでも甘えてしまうという、なんともめんどくさい人間だった。私が自覚している心を開いたサインは、声が低くなって会話が雑になること。逆に声が高い時は、実はものすごく緊張しながら会話をしている。猫を被っているようで嫌だったけれど、これが事実。ただ気を張りつめているだけ。友達に対して、好きであればあるほど適当人間になる。野良猫が突然懐いたような感覚じゃないかと思う。


ぼーっと、ゆっくりと一人の時間を過ごす中で、今までを考えてみた。出不精な私を、懲りずに何度も誘ってくれた友達。ローテンションで愚痴を言い合った、妙に波長が合う友達。恥ずかしいことも素直にさらけ出して、お互いを高め合える友達。私はこんなにもたくさんの人に愛をもらって生きている。そのことに気付いたら、無性に会いたくなった。

だけど私は、まだみんなに会う勇気がない。大好きな私で居られる自信が無い。見えない規制線が張られているみたいだ。こんな私でも、みんなは受け入れてくれるだろうか。みんなを困らせてしまわないだろうか。だからやっぱり、私にはまだ時間が必要なのだ。


きっと1度も伝えたことは無かったと思う。周りから見た私は、人に興味がなさそうだったんじゃないかな。素っ気なくて冷たい人間だっただろう。ごめんね。だからこそ、ちゃんと元気になったら、1回くらいは素直に伝えようと思う。私はみんなのこと、大好きだよって。

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