第五十三話
「――ちょいとあんた達、さっきから何なんだい? 『菊の井』の葬式だってのに、ずっとニヤニヤしてさ。礼儀ってものがなってないじゃないか。死んだお力への文句や愚痴もそうだけど、あの子の良い人についても、面白おかしく言ってやろうってんなら、あたしらが黙っちゃいないよ」
黒っぽい着物を着たお
彼女達は自分の腰に手を当てたり、胸元で両腕を組んだりしながら、ニヤつく男と
いつもより薄い化粧ではあるが、これまで
お角は、お力に次いで人気の酌婦だが、
「おいおい、『双葉屋』のお角が何の用だよ。お前の店のことではないのだし、噂の一つや二つくらい、良いじゃないか」
「良くないね。同僚が死んで、ただでさえ悲しいってのに、
お角の話に驚いたのは、男だけではなかった。
それまで、馬鹿にした目で
そんな彼らの様子に眉をひそめたお角は、鼻を鳴らして胸を張った。
「あの人はお力
数分もすれば、人だかりはほとんど消え、お力を馬鹿にしていた男も、いつの間にかいなくなっていた。
「ったく。あれくらいで話をやめちまうんなら、最初から来るなって話だよ」
「まったく、その通りだねえ」
お角と共に、野次馬を追い払いに来た酌婦達が笑っている間に、お力の葬列は遠ざかり、
無事に見送れたと、安心して軽く息を漏らすと、店に残っていたお
「本当はさ、同じ店の私が言わなくちゃいけなかったのに、代わりに言ってくれてありがとう。助かったよ」
「気にしなくていいよ。同じ仕事をする仲間だったんだし、男に苦労していた子だったからねえ。最後くらいは、味方してあげたかったからさ」
お角の言葉に首を
お角達も去り、
「……全部終わった後で、
風に乗って飛んでいく声に、黙って耳を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます