第4話 もうひとりの能力者

実のことをいうと、僕はもうひとりの戦闘員である女子の<キューブガン>の使い手と喋ったことがなかった。同じ戦場に派遣されても連携しなくても、戦えるので必要がなかった。今日の作戦では、彼女と同じ戦場に派遣されたが気まずくてまともに喋らなかった。なにかきっかけがあればそう思っていたときのことだった。不意を相手に突かれて、弾を腹に一発打ち込まれてもう一発当たりそうになったその瞬間彼女からの護衛弾がきた。相変わらずの威力で相手を跡形もなく消し飛ばした。

それ以来、彼女とよく話すようになった。一番初めは話しにくかったし会話も続かなかったりしたが今となっては友達のように話すようになった。その時彼女は僕に言った。いつか能力者の中に過去に戻る能力者が現れたら、あなたは過去に戻るかと。

僕は答え難かった。理由は僕にはわからなかったが彼女には、僕が軽く過去に戻るとは言えないようなそんな過去があるように感じられたのかもしれない。

「僕には変えたい過去がないんだ。ずっとこの戦争の地で生まれてきたから。」

そう答えるのが精一杯だった。その返事をきいた彼女は安心したような顔をして僕に自分が辿って来た過去について話をしてくれた。

彼女の名前は、(エメラルド・グリーン・マッカライト)外国で両親ともに日本人から生まれたそうだ。その頃戦争にはまだなってなかったそうで父親と母親は自分を大切にしてくれたそうだ。でも戦争によって父親と母親は戦地に行き帰ってこなかったそうだ。だから過去に戻り助けたいんだと彼女はそう強く語った。

そんな彼女を見ていると、自分にはそんなラノベみたいな記憶がないことに。

残酷のあまり忘れたいと心から思う記憶がないことに少し感謝した。その反面少しうらやましい気持ちにもなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る