2013年8月3週

「もう、限界。ねえ、ちーちゃん、そろそろいいでしょ?」

「だめ。もうちょっと我慢して。」

「だって、あやちもう限界。」

「ダメだって。そんなすぐにいってたら気持ちよくなれないよ?」

「気持ちよくなくていい!もう無理!水風呂行く!」

「ああ、あやちー!」


まだ9分だったのに。

あと3分くらいは我慢した方が、水風呂に入ったとき気持ちいいのに。

たぶん。

窓の外であやちが水浴びしてるけど、わたしは予定通りあと3分我慢。

テレビ見てたら結構すぐに時間たっちゃうから、あんまり気にしないけど。

あー、ブルーベリー狩りかー。

あとであやちに聞いてみようかなー。

ブルーベリーなら何個食べれるんだろ。

両手いっぱいくらいなら食べれそう?

ちょっと遠いなー。

もっと近くにないかなー。

あー、もう14分だ。

でなきゃ。


あー、生き返ってる。気がする。

誘ったはいいけどサウナなんてわたしも初めてだったからよく分かんなかった。

最初は心臓がギュッとするけど、水の中にいるとサウナの時とは違う感じで頭がぼーっとしてくる。


「ちーちゃん、長かったね。」

「あやちは早すぎだよ。気持ちよかった?」

「ん-、何かよくわかんない。またサウナに来たいってほどじゃないかなー。」

「ありゃりゃ。」

「でも珍しいね。ちーちゃんがこんなところ誘ってくるなんて。」

「ん-、特に理由はないけどさ。テレビでサウナ特集してるの見て、一回くらいはやってみようかなって。」

「え、ちーちゃんって、そういう流行に乗っかるの好きじゃなかったくない?」

「まあ、天邪鬼なところはあるけど。なんかみんな気持ちいいって言うから、一回くらいはやりたくなっただけだよ。」

「で、ちーちゃんは気持ちよかったの?」

「ん-、わたしもあやちと同じかな。2回目は別にいいかなー。」

「じゃあ、もう出ちゃう?」

「出てもいいけど。」

「なんかね、ここの施設で泥パックができるらしいの。そっち行こ?」

「はーい。」




「なんかつるつるしてる。気がする。」

「気がしてるなら、もうつるつるだって思い込んだ方が得じゃない?」

「気のせいな気もするけど。」

「もー、なんでちーちゃんはそういうこと言うのー! 」

「こういう効能っていまいち信じられないんだよねー。」

「そんな風に心が狭いから、彼氏もいなくなっちゃうんだよ!」

「それとこれとは…………「関係あるでしょ!」……かも?」

「もー、せっかくお金払ったんだから、『楽しかったー!』とか『ピチピチー!』とか言えばいいのに。もったいない。」


もったいないかー。

たしかに素直に楽しめないのはもったいないのかも?

わたしがもったいないというよりも、あやちがお気楽すぎるだけな気がするけど。

でも、あやちみたいに考えてた方が人生ハッピーな気がするし。

うらやましくもある。


「じゃあ、最後に、美味しいもの食べて帰ろ!」

「え、そんなことしたらせっかくサウナで落とした体重が……」

「ちーちゃん!」

「はい! ?」

「ちーちゃんって何のためにサウナに来たの?」

「体重を落とすため……?」

「じゃあなんで体重落とすの?」

「えー、やっぱ女子ならダイエットしとかないと。的な……?」

「いいねー、モテる人は。」

「なによー。モテても続かないんじゃ意味ないじゃん!じゃあ、あやちは何のためにダイエットしてるの! ?」

「もちろん、減らした分美味しいもの食べるためだよ!行くよ、ちーちゃん!近くに食べ歩きスポットがあるんだから!」

「食べ歩きするやつって、総じてカロリー高くない?」

「もー、またそうやってネガティブなことを!」

「ネガティブかな?」

「美味しいもの食べたら幸せになる!幸せが体重に現れる!でも体重に現れるということは、幸せが体に残ってる!OK?」

「よくわかんないけど、わたしそんなにダイエットするつもりないからどうでもいいけどさ。あやちの心配してるだけで。」

「じゃあ大丈夫!明日からあやちはダイエット再開するから!今日はダイエットお休み!」

「はいはい。」


なんで屋台で売ってる肉まんって、あんなに美味しそうなんだろ。

コンビニのレジ横の肉まんなんて買ったことないのに。

あー、あやちのほっぺが汚れて…………。


あれ。

今日何しにサウナ行ったんだっけ。

あー、あやちの毛のね。

忘れてた。

もういいや。

あやちとたくさん遊んだし、もういいや。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る