2013年8月1週

「あやちも髪切ろうかなー?」

「そんなこと思ってないくせに。」

「思ってないけどー、やっぱり髪長いのは邪魔なときだってあるし。」

「でも切らないでしょ?」

「んー、せっかく伸ばしたからもったいないし。」

「まあ気持ちは分かるけどね。」

「そういえば。ちーちゃんって気づいたら短くなってるよね?」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「何が?」

「わたし、新しい彼氏ができると髪切るの。」

「ええ、なにそれ。普通別れたら切るんじゃない?」

「なんかそれって相手のためと言うか、なんか依存しちゃってるみたいで、ちょっと未練がましくない?」

「でも、ちーちゃんの髪切る理由も同じもんじゃない?」

「わたしの場合はわたしのために切ってるから、ちょっと違う?」

「いや、あんまり変わんないじゃん。」

「んー、何て言うのかな。髪の長さで、あーこの人と付き合ってどれくらいたったなーって分かるじゃん。」

「うんうん。」

「そうするとさ、これくらいの髪の時は、付き合ってどれくらいの時期で、彼氏とはあんなことする時期になってくるなーみたいな。今の彼氏がどうなのかを評価するための指標みたいなやつだね。」

「前の彼氏と比較してるってこと?」

「まあ、有り体に言えばそうだね。やっぱ絶対評価って難しいから、何かと比べないと良いか悪いか分かんなくない?」

「えー、うーん。そうかも……?あれ、ちょっと待って、じゃあ今彼氏いるの?」

「んーん。もういない。」

「え、めちゃくちゃ短いよ?」

「そうだね。三日だったね。」

「え、めちゃくちゃ短いじゃん!」

「それ、今さっきも聞いたよ?」

「さっきの短いは髪で、今の短いは「日数ね?」そう!なんで?」

「なんでって、わたしに聞かれても。ね?」

「んー、ちーちゃんってこんな優良物件なのに、なんですぐ分かれちゃうのかな。」

「わたしから別れたことって一回もないんだけどね。」

「じゃあちーちゃんって、隠れ事故物件なんだ。」

「それ凄い悪口だよね。」

「でも自覚してるんじゃないの?」

「さすがにね。薄々ね。」

「かわいそうなちーちゃん。」

「そんなすぐ分かれるなら付き合うなよってね。美容院代返して欲しいよね。」

「ちーちゃんの理不尽が出てる……」


なんでかなー。

別に彼氏が欲しいと思ったことは正直言ってない。

でも、要らないわけじゃない。

居ればいるだけ良いと思う。

女子大生なんだから、恋人同士でしかできないことだっていくらでもあるはず。

もちろん将来は結婚したい。

できれば専業主婦が良いけど、無理も言えないよね。

結婚するなら、ちゃんと相手選びたいし。

なら経験つんどかないと、いざってときに結婚相手を決めることもできないじゃん。


「ちーちゃんって最高どれくらいまで長かったの?」

「たぶん高2の時じゃないかな。」

「あー、夏休み明けたら短くなってたよね。めっちゃいろんな人に問い詰められてたよね?」

「そうだったねー。絶対に『失恋だー』って決めつけられてさ。続いとるわい!って思いながら流してたよね。」

「え、その時の彼氏って誰だったの?言われなかったの?」

「同じ予備校の人。あやちは知らない人だね。先に言ってたの。『あまりに髪長いのがウザイから切るね』って。」

「反対されなかったの?」

「反対っていうか、驚かれたというか。あの時、腰まであったから首が出るくらいまで切るって言ったら、さすがにね。でも、『夏にドライヤーそんな当ててたら干からびちゃうから』って言ったら納得してくれたよ?」

「本当に納得してたの?」

「まあ正直微妙だったかも。でもわたしの髪だからね。彼氏のために伸ばしてないから。ダメって言われてたら別れて切ってたんじゃない?」

「ちーちゃんってたまに凄い男らしいよね。」

「そうかもね。こういう潔さに目が向くと、そう見えるかもね。ただ、髪が短くなって、タオルでガシャガシャーって拭くだけで水気がほとんど乾いたのはメチャクチャ良かったよね。」

「そうえいば、ちーちゃんって髪染めないよね?」

「そうだねー。染めてみようと思ったこともあるけど、別に黒のままでもいいし、短いこと多いから染めにくいし。あやちは結構変えるよね?」

「だって、かわいい方が良いじゃん。今ちょっと明るめだから、秋になったら暗めにしても良いかなって。」

「でも茶色か黒系くらいだよね?もっとすごい色にしなよ。」

「例えば?」

「んー、赤系とか。赤好きじゃん?」

「想いっきり赤なのは怖くない?明るい茶色くらいならいいけど。」

「あれ、あやちって眉毛もいつも染めてるよね?お店でやってるよね?」

「そうだけど?」

「やっぱ眉毛も染めないと目立つ?」

「明るめの色に染めてたら、前髪降りてたら、眉毛の黒は目立つと思うけど。暗めなら目立たないからいいんじゃない?あやちはいつもお店だから一緒に染めてもらうけど。」

「じゃあさ、…………。…………。」

「え、何、ちーちゃん。」

「やっぱいいや。」

「ふーん、変なの。」


下の毛はどうしてるのって聞こうと思ったけど、だいぶキモいよね。

そこまで聞く必要ないもんね。

あれ、てか、処理してるのかな?

彼氏いないなら必要ない?

でも夏は水着のラインがあるし……。

そもそも女子ってどれくらい気にしてるのかな。

男ってどれくらい気にしてるのかな。

あやちってそういうこと気にしてるのかな。

聞いたら聞かれるよね。

…………。

今度銭湯に行けば、見れるかも。

って、それじゃあ、あやちのが見たいみたいじゃん!

あー、どうしよ!

もー。

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