2013年8月4週
「じゃりじゃりするー。」
「でもこのじゃりじゃりが、別に美味しい訳じゃないのにいい味出してる気がするよね?潮の味?」
「えー。ちーちゃんってやっぱり変なところあるよね?」
「え、わたしだけじゃないと思うよ、この感覚。海の家の焼きそばなんて大体じゃりじゃりしているのに、みんな食べてるじゃん。」
「あと、ちーちゃんっていつもこれでもかってくらい紅ショウガのせるよね?」
「この、『ほぼ紅しょうがの味じゃん!』みたいなのが良いんじゃん!」
「じゃあそれ焼きそばじゃなくてもいいじゃん?」
「もー、あやちは分かってないなー。」
「紅ショウガそば食べてる人に言われたくない……。」
夏真っ盛りに海に来ないなんてもったいない!
この日のためだけに、あやちしか見せる相手なんていないのに水着も新調!
一応、ナンパを狙うために、ちょっときわどい青系のビキニ!
前に着てたやつがワイヤー入りでちょっと肩が痛かったから今回はノンワイヤー。
あやちは、なかなか攻めた真っ赤なビキニ。
遠くにいても目立つから見失うことはないけど、男の視線もちょっと奪うよねー。
この子を一人にしといたら確実に持ち帰られそう。
「ねえ、ちーちゃん!お昼食べたらどうする?」
「まだ海に入ってないから、ちょっと沖まで泳ごうか?」
「沖まで?怖いよー。足着くくらいところくらいまでね?」
「えー、せっかく海に来たんだから、波にさらわれながら泳がないとー。」
「でも怖いものは怖いもん!」
「じゃあさ、浮き輪借りよっか?わたしが引っ張ってってあげるよ。」
「ん-、ちーちゃん溺れない?」
「分かんないけど、まずまず泳ぎは自信あるよ?」
「海で泳いだことは?」
「…………。今日が初めてだけど……。」
「じゃあダメ!おとなしく腰くらいまでの場所で遊ぶよ! 」
「はーい。」
そうねー、海なし県に生まれ育ったわたしたちは、川で泳げても海では泳げないかもね。
遠泳は次の機会ねー。
こういう時は素直にあやちにしたがっとこ。
「浅瀬でも思ったよりはしゃげたね!」
「だから言ったじゃん!遠くまで泳いで溺れるよりもこれくらいの方があやちたちは似合ってるよ。」
「さすが、先見の明をもつあやちだね。」
「もっと褒めてもいいよ!」
「あー、真水きもちいいー!」
「ちょっとー、無視しないでよー!」
気持程度に100均で買ってきた水鉄砲で遊んだり、手で水を掛け合ったり、貝殻拾い集めたり。
海って、実は泳がなくても十分楽しめることが分かった。
ただでさえ地面は砂浜だし、波に体を持っていかれるしで、体力も思ったより持ってかれてた。
川で1日遊んでもここまで疲れないのに。
人の数も減り始めてきたので、わたしたちもそろそろ切り上げようということでシャワーを浴びて海水とか砂とかを落としに来てるところ。
わたしの髪が短いのはこういうところでも便利らしい。
髪を洗うのにもあやちは凄いてこずってるっぽい。
さっきから『あー』とか『うー』とかうめき声が聞こえてくる。
「ねー、ちーちゃーん! たすけてー!」
「えー、どうしたの? 」
「ちょっと、中入ってきてー!」
「ええー、しょうがないなー。で、どうしたの?」
「水着の内側洗おうとしてたら、紐がグルんぐるんになっちゃってー! 紐を硬く結びすぎちゃったからほどくにほどけなくてー。」
「あらあら。ちょっと見して。」
どうも水着の裏表がてんやわんやになってた。
これこそが男を誑かす天然かー。
わたしもこれくらい可愛くドジ踏めたらよかったのになー。
ってか
「ちょっと、マジで、硬すぎ。」
「ね?ちょっとちーちゃん助けてよー。」
「ん-、着たままだと上手いこと外せないし、一回脱いでもらった方が良いかも 。」
「ええー! こんなところで脱ぐの!?恥ずかしい……。」
「だってどうしようもないじゃん!あやちが怪力過ぎるのがいけないんだよ!」
「あやち怪力じゃないもん!もー、じゃあ脱ぐからちょっと待ってて。」
「え、いや。」
脱いで、紐の結び目ほどくだけならわたしいらなくない?
あやち一人でやればよくない?
あーあー、もー。
脱ぎ始めたら、ここからわたし出れないじゃん!
今出たらあやちの裸も世に出すことになっちゃうじゃん!
もー、勝手に走っちゃうんだから ー!
にしても、おっきいなー。
あやちの。
あと重力に逆らえない柔らかさ。
見てるだけで柔らかいのが良くわかる。
実際のところは触ったことないから分かんないけどさ!
…………。
いやいやいやいや。
あやちがピンチに陥ってるのに。
そんなこと。
…………。
いや別に、大したピンチでもないか?
もうなんでもいいや。
水着を何とか剥ぎ取ったあやちが、わたしにビキニを押し付けてくる。
わたしがほどけってことか。
マジで。
マジで硬い。
思わず気合を入れるために声出ちゃった。
女の子らしくないよね。反省反省。
「はい、ほどけたよー。」
「ちーちゃんさすがー!ありがとー! 」
「はいはい、どうもー。」
女同士なんて見慣れてるはずで、別に今更あやちの着替えを見ても何とも思わないと思うんだけど。
あやちが背中を向けてまた水着を着直す姿を、じっと見ちゃう。
目が離せない。
不思議。
高校の時なんて、もう毎日のように体育の着替え見てたのに、あの時にはこんなことなかった。はず。
この前のあやちの裸を見ちゃってから?
なんか意識するようになってる?
着替え終わったあやちに声をかけられて、我に返って、帰宅の準備。
息と同じ電車でゆらゆらと帰宅する二人。
なんかあのシャワーの時からずーっとぼーっとしてる気がする。
疲れてるからだよね?
あー、そうやって思うと途端に眠気が。
無事、駅で起きれますように。
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