第二話 交渉は手加減しない
紅く長い髪の美女と黒いオールバックの男性が大きな門の前に立っていた。
周囲の学生たちはざわめき立つ。
「わぁ!かっこいい人たちだ!」
「あの人たちはどこかの王族かな?」
「いや俺は公爵様だと睨んでいるぜ」
「いやいや、きっと侵略に来た地球生命体だよ」
「「「いや、それはない」」」
クロキもリンネも超人だ。
声は聞こえる。
「騒がしいわね。嫌だわ」
「ふむ、元気なのはいいことだ。気にせず行くぞ」
「ええ」
ずんずん進んで行く二人。
すれ違う人すべてが足を止め、見つめる。
それは容姿だけではない。
溢れ出る魔力の強さと美しさに足を止めるのだ。
紅と灰が織り成す美しい光景。
最強格の二人が揃うことで起きる現象だろう。
「クロちゃん、扉が閉まっているわ。それに魔法が掛けられてる。どうするの?」
「ふむ」
学園長室、と書かれた部屋の扉に手をかけ、リンネは言う。
「はぁ、全く。無駄な足搔きをしおって」
クロキは扉に触れた。
魔法陣が広がる。
「開けないと部屋ごと消し飛ばすぞ?」
「い、今、開けます!」
ドタバタという音が部屋の奥から聞こえる。
時々ガシャンという音も聞こえる。
大丈夫かしら?
頭を打っていないといいのだけれど。
「よ、ようこそお越しくださいました。灰の処刑人様、紅の魔女様。お久しぶりでございます」
眼鏡のエルフの青年が前に出る。
この子、確かうちのギルドに前いた気がするわ。
いたわよね?
「む?名前は?」
「クロキ様とリンネ様ですよね?」
「他人行儀だったので忘れたのかと思ったぞ?」
ふふ、クロちゃんはそう呼ばれるのを好まないわ。
呼ばれるとちょっと顔を
でもなぜか他の変な名前で呼んでも怒らないのよね。
クロクロとかクロリーヌとか。
何故なのか分からないわ。
「何の話をしに来たのですか」
「手紙に書いたが?」
ちゃんと書いたんだ。
私のために手紙を書くクロちゃんを想像するとなんだか嬉しいわ。
「今、確認します!」
「いい、私が言う」
クロキは
私が国から魔法学園に行くよう言われたこと。
ついでにクロキも行くということ。
そのときに偽名を使ったり素性を隠したりすることを。
「は、はぁ。それなら私の権限で入れましょうか?俗にいう、裏口入学という奴ですが」
「舐めているのか、貴様?」
「ん゛」
学園長の眼鏡にひびが入る。
顔が引き
切れてるクロちゃんも可愛いぃ!
正面から眺めたい!
というか慰めてあげたい!
「黙れリンネ。心の声がうるさいぞ」
「すいません」
何を隠そう、クロちゃんはなんとなく心が読めるのだ!
恥ずかしかったっけど、もう慣れた!
私はありのままで生きる!
「黙れ」
「はいぃ…………」
クロキは視線を学園長に戻す。
「試験は受ける。今回は迷惑をかけると思って来たんだ。学園長の仕事を頑張ってようで安心したぞ?」
「ありがとうございます。それでも、やっぱり何かできることはありますか?」
クロキは右手を口に当て、考える。
もう、かっこよくて好き。
私はもうダメかもしれないわ。
「では、合格すれば私たちを出来るだけ同じクラスにしてくれるか?」
ふふ、どうやらクロちゃんは私を殺すつもりのようね。
「ええ、いいですよ。お安い御用です」
リンネは内心ガッツポーズをしていた。
(成績で分けるから問題ないと思うなぁ。けどまぁ、いっか)
紅の魔女、魔法学園に行く!―うちの最強上司と一緒に無双します― 仕える白銀 @hakugin-tukaeru
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