第一話 誉め言葉は手加減しない

オールバックの黒髪に黒いスーツ、紳士風の白い手袋を付けた男性が手を組んで座っていた。

鋭い眼光が書類からこちらに向けられる。


ここはクロキの書斎。書斎のくせに本はほとんどない。ガラガラの本棚が寂しそうにしていた。


「リン、なぜ呼ばれたかは分かっているな?」

「え?…………あっ、ええっ!」


ヤバ、見惚れていた。

仕事終わりにクロちゃんに呼び出されてウキウキしてたけど違うのかしら?


「ふむ、貴様にはドレイク魔法学校に行ってもらいたい。そこで三年間過ごし卒業証書を受け取ってもらいたいのだ」

「ドレイク魔法学校?私は紅の魔女。炎魔法の世界の頂点よ?学ぶことあるかしら?」


あんなつまらない授業受けたら寝てしまう自信があるのだけれど。

他の魔法もそこそこ使えると思うし。


「リン、貴様最終学歴は?流石に覚えているだろう?」

「えっと、たしか…………高等部だったかしら?」

「国からの伝達だ。学校に行けと」

「その国滅ぼしていいかしら?」


クロちゃんとの時間を奪うものは消す。

世界の理だわ―――


「ふむ、いいぞ。………さて、次の後釜を探さなくては…………」

「じょ、冗談だから!本気にしないで!」


この人、冗談じゃなくてホントに出来るから駄目!

定期的に悪政を敷く小国を滅ぼしているもの!

本気出したら世界の半分が消えるわ!


「大丈夫だ。私が出向く」

「い、行きますから、やめてあげて…………」


ニコッとクロキは笑うと言った。


「では行け」

「はい」


計算されていた?

でもそんなクロちゃんもかっこいいから良し!


ほくほく顔で私が出ていこうとすると後ろから声を掛けられた。


「心配するな。私もついでに行く。貴様ほどの美人を一人にするのは心配だからな」


私は無言で出ていく。

ドアを閉めた後、私は悶え続けた。


何あれ!反則でしょ!


翌日、再びクロキの書斎にて。


「まず、学園長に挨拶する。試験は受けるが偽名を使う上に怪しいだろうしな」

「挨拶ですか?」

「ああ、軽く脅しに行く」


クロキの眼の奥は光ってなかった。

リンネは内心、ゾクッとする状況を楽しんでいた。

変態である。

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