第6話
「兄貴、おかえり!今日の夕飯はピザ!」
「最近の冷食って凄いよな、マジなんでもあるわ」
二人の出迎えを受けながら、時音の言葉を思い出す。
『お前は元に戻してくれと頼んだみたいだが、それじゃあ駄目なのさ。俺が思い描いた通りの兄弟像にしてくれ、くらい言わなきゃ。』
「……札よ、『俺が思い描いた通りの兄弟像にしてくれ』」
二人の動きが止まった。もしかしたらこれは、成功なのか?思わず目を見開いてしまう。
しばらくすると二人は動き出し、「兄貴食わねえの?」と催促までしてくる。
「……食う」
俺は一切れを口へ運んだ。チーズの旨味とトマトの酸味が合っていて、とても美味しい。
「ったく、変な兄貴」
「ところでさー、今日一茶がズボンにコーラこぼしてマジウケんだけど!」
これを言ったのは、茶也の方である。今までと違う。あの札はどうやら、本当に効いたらしい。どうして効いたのか、それは言葉の選び方であろうがここまで昨日と違うとは。少し感動した。
「それは言わない約束だろ!」
一茶が顔を真っ赤にして茶を飲んでいる。札の効力は凄まじい。時音はどうやってこの札を作ったのだろうか。
ごちそうさまと挨拶すると、「俺先風呂入るから」と一茶だけ風呂場へ向かった。
「あーあ、つまんねーの。なんかさ、兄貴。わかんねーかもしれないけど。何かが欠けちまった気分」
茶也の方は寂しそうに話しかけてきた。
「でもずっとそうだっただろ?」
そう答えておけば、間違いないだろう。この二人は最初からそうであったと思わせられれば、俺が描いている通りの兄弟像になるはずだ。
「多分、違う。俺が想像してたのはもっとこう……お互いがお互いを支えてるっつーの?そういう感覚。でもそれは夢だか勘違いだかだったのかもな。わかんねーけど!」
__もしかして、元の世界の方が二人は幸せだったのか?
そんな疑問が頭をかすめたが、札はあと一枚しかない。数日様子を見て、時音に相談することにしよう。
アイツの顔は、毎日見るモノじゃない。見たくない。
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