第4話
「兄貴、おかえり!」
茶也が出迎えてくれた。その様子は、至って普通だ。
「今日の夕飯は満州の餃子だぞ!二人で選んで買ってきたの、もう準備してあるからな」
確かに、リビングには美味しそうな匂いが充満している。料理は一茶がしているのだろう。大体雑用をしているのは一茶の方だ。
早急に手洗いうがいを済ませ、食べ始めることにした。
「いただきます」
「ただき、ところでさぁー今日茶也がマジありえねーことしてたんだけど。映画館で隣に座ってた女の子ナンパしてんの、マジバカじゃね?」
当然(これが当然なのはおかしいが)、これを話しているのは茶也本人である。こちらとしては反応に困るので、受け流すしかない。
『人の願いを一枚につき一度叶えてくれる札』『お前が弟に普通になって欲しい、と思うならその願いを叶えてくれるってワケさ』
時音の声が脳裏をよぎった。あの札はまだ、俺のズボンの中に入っている。
一度くらいなら、あいつの虚言に乗ってやってもいいだろう。札を取り出し、
「札よ、『弟たちを元に戻してくれ』」
と、時音がしたことを反復した。
「……え、兄貴何それ」
「兄貴オカルト?マジねえわ、そういうの」
しかし、二人は半笑いで顔を見合わせていた。失敗だったのか、時音に乗せられたのかわからないがとんでもない恥晒しだ。自分の顔が赤くなっていくのがわかる。もう嫌だ。
「……何でもない!」
恥ずかしくなって、飯をかきこむ。明日、文句を言いに行こう、そうしよう。
仕事が終わったら。
「「……俺達はいつだって、『普通』だよ」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます