第4話

「兄貴、おかえり!」

茶也が出迎えてくれた。その様子は、至って普通だ。

「今日の夕飯は満州の餃子だぞ!二人で選んで買ってきたの、もう準備してあるからな」

確かに、リビングには美味しそうな匂いが充満している。料理は一茶がしているのだろう。大体雑用をしているのは一茶の方だ。

早急に手洗いうがいを済ませ、食べ始めることにした。

「いただきます」

「ただき、ところでさぁー今日茶也がマジありえねーことしてたんだけど。映画館で隣に座ってた女の子ナンパしてんの、マジバカじゃね?」

当然(これが当然なのはおかしいが)、これを話しているのは茶也本人である。こちらとしては反応に困るので、受け流すしかない。


『人の願いを一枚につき一度叶えてくれる札』『お前が弟に普通になって欲しい、と思うならその願いを叶えてくれるってワケさ』


時音の声が脳裏をよぎった。あの札はまだ、俺のズボンの中に入っている。

一度くらいなら、あいつの虚言に乗ってやってもいいだろう。札を取り出し、

「札よ、『弟たちを元に戻してくれ』」

と、時音がしたことを反復した。


「……え、兄貴何それ」

「兄貴オカルト?マジねえわ、そういうの」

しかし、二人は半笑いで顔を見合わせていた。失敗だったのか、時音に乗せられたのかわからないがとんでもない恥晒しだ。自分の顔が赤くなっていくのがわかる。もう嫌だ。

「……何でもない!」

恥ずかしくなって、飯をかきこむ。明日、文句を言いに行こう、そうしよう。

仕事が終わったら。


「「……俺達はいつだって、『普通』だよ」」


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