第2話

家に帰ると、一茶達が迎えにきてくれた。

「兄貴、今日の飯はサイボクの揚げものオンパレードだぜ」

髪が短く、しかしながら少し暗い印象の一茶が言う。一茶は暗いと言われながらも体術に優れており、県の空手大会で何度も優勝している。大学には、スポーツ推薦で入っている。

「食いすぎて太りすぎない様になー」

髪が長い方の茶也は、ハツラツとした印象だ。サラサラしたストレートな髪質は、よく女性から羨ましがられている。軟派ではあるが、こちらも身体は鍛えている。腕の筋肉だけでもそれが伝わってくる。

女遊びをしていると聞いたが、真偽はわからない。確かにモテるだろう。俺とは違うオレンジ色の瞳は透きとおっているし、話術も上手い。

だが、情報源が時音なのは怪しすぎる。アイツはロクなことを言わない。

「それはお前らだな」

俺は手洗いとうがいを早急に済ませ、席についた。


母と父は、今日も空の上で仕事をしている。キャビンアテンダントだのパイロットだの、俺の家族はそういった職業に就く者が多い。事実、俺も航空管制で働いている。弟たちがどうなるのかは、まだわからない。だが、大方似たような道を辿るのではないかと思っている。二人とも幼い頃から飛行機には慣れ親しんでいるし、以前「空飛びてぇなぁ」と頻繁に口にしていた。


「それにしても一茶の奴、本当にヤバかったよな!運転荒すぎだろ」

これを言っているのは、茶也ではない。一茶本人である。

__また始まった。これで何度目だ。注意しても無駄だということはわかっているので、もう何も言うまい。俺はメンチカツを頬張った。ここの揚げ物は美味い。我が埼玉県が誇る料理の一つだろう。肉汁が溢れ出て、口内を満たしていく。ぎっしりと詰まった肉はボリューム満点で、胃を満たしてくれる。弟たちのことは次第にどうでもよくなって、一人黙々と飯を食い続けた。

「ごちそうさま」

そう挨拶し席を立つ。

「早っ、兄貴さぁ……」

「全然話さねえよな、そういう主義にいつからなったんだよ」

二人は無視して食器を洗う。水の音が、二人との壁を作ってくれているようで少し安堵する。

「じゃあ兄貴、先に風呂入ってくるから」

「邪魔すんなよー」

俺が何も言わないのをいいことに、二人は風呂場へ行ってしまった。


リビングには、俺一人が取り残されている。あの二人に注意など、最早どうしたらいいのだ。

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