第2話 君の絵
49日が過ぎても僕はこの世に留まらないといけなかった。彼女を悲しませた罪があるのだろう。もし赦されていても僕は"あそこ"には行くのは断っただろう。僕にはそんな資格、ない。
そう思っていた。
彼女は絵が上手だった。いつもスケッチブックを持っていて色々な絵を描いていた。どの絵も綺麗なのに彼女は
「下手だよ。もっと上手い人はいっぱいいるよ」
って自分を卑下する。僕はいつも、十分上手だよ。と彼女に言っていた。
最近彼女は絵を描かない。僕の好きだった彼女の横顔をもう見られないのは少しだけ嫌だった。だから、特別な日。3日間だけの彼女と会える特別な日。その日に伝えよう。全てのことを。
特別な日。僕は胡瓜の馬に乗って彼女の元へ行った。僕はずっと上で見てるだけしかできなかったから、この3日間を無駄にしてはいけない。それからは1日目に僕の日記のところへ彼女を連れて行って僕が吐いていた嘘をバラした。そして、彼女をスケッチブックのところへ連れて行った。彼女は
「ははっ、君は今さら私に絵を描かせるの。もう描けないよ、君がいないなら描けないよ。」
そう言った。だから僕は僕にできる力の全てで桜を咲かせた。時期外れの桜の開花に彼女は驚いただろうけど、
「無駄なお節介だなぁ、じゃあ君のために描いてあげるよ。」
と言って描き始めた。その姿は僕の大好きな彼女の姿だった。
それから彼女はずっと絵を描いている。そして僕は上へ戻らなかった。茄子の牛は帰ろうと僕に言ったけど、僕は帰りたくなかった。彼女をもう置いて行きたくなかったから、だからそのために僕は神様にお願いをした。
「僕は彼女に償いをしないといけない。嘘をついたこと、泣かせてしまった事、約束を守れなかった事、あの日涙を拭ってあげられなかった事、僕の口から告白してあげられなかった事。
たくさんあるんです。どうかお願いします。僕にチャンスをください。一度だけでいいです。お願いします。」
そう言ったら神様は呆れ顔で許してくれた。罪を償うため、彼女を助けるため、そのために僕は君の元へ行く。だから、君は今まで通り絵を描き続けてくれ。君の夢を叶えるために頑張ってくれ。そう願った。
幸せの時間 天ヶ瀬羽季 @amauki_2023
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