幸せの時間
天ヶ瀬羽季
第1話 別れと悲しみ
朝、いつも通り目が覚めることがどれだけ幸せなことか僕は今、初めて知った。
あの子の誕生日の前日、僕は死んでしまった。約束を破った僕は君に怒られるべきなのに彼女は泣いていた。会いたいと。
僕は罪滅ぼしをしたかった。あの子に渡す予定だったはずの言葉は言えなくて、あの子が僕の日記を見ないと分からないような状態に僕は何をやっているんだ。と自分を責めた。
毎日毎日泣いてるあの子を見るのは辛かった。拭ってあげられない涙を見て、君の嗚咽を聞いて、僕は後悔してしまった。君に僕は何もしてあげられない。ごめんね、君のことをもう泣かせたくないのに、苦しめたくなかったのに。
一年前、あの子に出会った日、僕は車椅子に乗っていた。僕は元々病弱だった。その時、薬の副作用で下半身が麻痺して動かなかった。車椅子を自分で動かして、桜を見に来ていた時、彼女に会った。綺麗なドレスを着た彼女は僕を助けてくれた。病室まで運んでくれて、その日から毎日会いに来てくれた。何気ない話をするのは楽しかった。ただ病状が悪化して、話ができなくなった日、彼女は泣いていた。どうしても意識が遠のきそうだからよく覚えていないけど、その時もごめんねと言った。彼女は
「謝るくらいなら早く治して私と話してよ、」
と言っていた僕は首だけ動かして、分かったと反応した。
それから1週間後くらい病態が安定してきて、またあの子と会話ができるようになった。
彼女は嬉々としていつも話をしてくれる。可愛い彼女は僕に早く良くなるといいね、と少し寂しそうに言って帰って行く。その姿を見ると僕も寂しくなる。なんだか、もう会えなくなるような感じがして、怖くもなった。
一ヶ月が経った頃、余命宣告と共に僕は退院をした。余命はあと一年。来年で桜を見られるのも終わりだった。ただそんなこと彼女に言えなくて、
「完治したよ。これからは元気に過ごせるって先生が」
と嘘を吐いた。きっと彼女は分かっていたのだろう。少し切なそうな顔で無理した笑顔で、
「そっか、良かったね。」
と言った。なんとも言えない状況だったけど、後一年ある。許されるだろう。ギリギリまで僕は彼女の前では元気な僕を見せたかった。そんなこと無理だったけど、最後まで嘘を貫いた。彼女はどう思ったのだろう。そんなこともう確認できないけど。それでも間違っていなかったと思う。あれは彼女への嘘ではなくて、僕自身への嘘だったのかもしれない。そう気づいたのは僕が死んで、49日が経った特別な日だった。
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