第11話 助け
澪とシャルのどちらにしようか迷いましたが、シャル視点にしました。
――――――――――――――――――
「ん・・・」
「起きた・・・?」
誰・・・?
あ、そうよ!
私、確か捕まって・・・
私が起き上がろうとすると、ガチッと後ろで音がした。
記憶通り・・・手錠をかけられたままね。
「えぇ・・・起きたわ。」
「誰・・・?」
私の目の前で寝転がっていたのは、私でもよく知っている少女だった。
「あなたは、白桜澪ね。」
「そう・・・あなたは?」
「私は東雲シャル、第九研究所の研究員よ。」
「第九・・・優斗がいってるところ・・・ということは、優斗の異能を研究してる人?」
「そうよ。」
あいつ、私のことを説明してなかったの?
まぁ、研究の秘密事項もあって言ってなかったのかも。
「あなたはどうして・・・捕まったの?」
「私をあいつ、空谷優斗をおびき寄せるための餌にするためね。ついでに、あいつが抵抗したときの人質とするためらしいわ。」
「どうして、優斗が・・・?」
ん?
私と違って、問答無用に連れてこられたのかしら。
いや、幼馴染という関係性もあるから、あいつのことは伏せて説明しようとしたのかもしれないわね。
だけど失敗したから、捕まえたと。
最悪なのが、日本でトップクラスに強い『白銀の戦乙女』が負けたってことね。
相手はそれより強い・・・さすが、『ハウンド』ね。
状況はより最悪だけど。
「最近、噂になっている狐面の男、そいつの正体が空谷優斗なのよ。」
「え?そんな・・・ありえない!」
「あり得るのよ。狐面はどうやら聖遺物みたいね。理事会の奴らがそれに目をつけたらしいわ。」
「そんな・・・優斗が・・・」
「本当の・・・」
『あー、通じているかね。』
「「っ!?」」
私達は声がした方向を見ると、部屋の壁に映像が投射されていた。
ひと昔の技術ではあるけど、映像はかなりきれいだ。
『ふむ、どうやら通じているようだ。さて、すぐに本題に移ろう。端的に言うと、目的は半分達成した。』
「半分?」
半分とはいったいどういうこと?
聖遺物は手に入れたけど、あいつに逃げられた?
それとも、あいつは捕まえたけど、聖遺物は手に入らなかった?
『君達のおかげで、空谷優斗の捕縛には成功した。君達が捕まっている映像を見せただけで、大人しく捕まってくれた。いやはや、まだまだ子供だったというわけだ。』
「あんたの方が子供でしょ。自分の欲しいものだからって、人の物を奪おうとしてるんだから。」
『これでも我々は異能の発展のために、力を注いでいるというのに。あの東雲博士もまだ子供だったということかな?』
「あんた達が外道だってことだけは今回のことで分かったわ。」
『威勢のいいことだ。ただ、聖遺物が手に入らない以上、君達を解放するのも遅れてしまう。というわけで、再び協力してもらおうと思ってね。』
「あんたに協力なんてしないわよ。」
『くくく・・・これを見ても言えるかな。』
映像が切り替わる。
真っ白な部屋・・・どこかの訓練場かしら?
映像の中央には黒い何かが映っている。
「優斗・・・優斗!」
さっきまで、黙っていた白桜澪がいきなり騒ぎ出して、私はびっくりした。
どうやら、映像に映ってるのはあいつらしい。
『空谷優斗・・・彼はどうやら強力な異能により精神プロテクトがかかっているため、脳から情報を読み取ったり、情報を吐かせることができなくてね。仕方なく、拷問を行ったが、それでも吐かない。』
「優斗・・・」
さらりと拷問って言ったわね。
というかこの短時間でどうやったのよ。
私が捕まってから多分、3時間くらいしかたってないはずよ。
最初から色々と手配してたってわけね。
『というわけで、君達2人を脅しに使わせてもらおうと思っている。』
「卑怯者!」
「白桜澪、ちょっと黙ってなさい。・・・私達に手を出して大丈夫だとでも?」
『あぁ、さすがに【白銀の戦乙女】はまずいかもしれないが、君ならね。』
「なら、残念ね。私じゃあ、あいつへの人質にはならないわよ。」
いくら理事会の気狂いでも、白桜澪を傷つけるのはまずいのは分かってる・・・。
なら、私が狙われるのが当たり前よね。
だけど、私じゃあ、そもそも人質になるわけないわ。
いや、少しはなってほしい・・・と思わなくもないけどね!
『なるのだよ。空谷優斗は君のことも心配しているようだったよ、東雲博士。』
「・・・。」
『おや、だんまりかね。まぁ、安心したまえ、空谷優斗がすぐに吐いてくれれば、君を傷つけることもないのだから。』
あいつ・・・私のことまで・・・。
あぁ、もう!
今日はとんだ厄日だわ!
助かった後には、あいつをとっちめてやるんだから!
『さてさて、それでは映像を繋がせてもらおうか。君達には空谷優斗の声を聞こえるようにしておこう。一方通行だがね。』
どこかの誰かさんの声が途切れると、映像が中央にいたあいつにズームする。
あいつの荒くなった息の音が、私達には聞こえていた。
『澪・・・シャル・・・無事か・・・?』
「無事!」
「今は無事よ。」
聞こえてないと分かっていても、答えてしまう。
『そうか・・・あぁ、今すぐ助けてやるからな。』
助ける?
どうやって?
『まったく・・・助けに来るのが遅いぞ。』
あいつがどこか安堵した表情で私達がいる方向じゃない方を見て、口を動かす。
次の瞬間、あいつの顔に金色の狐面が装着されていた。
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