第12話 救出
俺は目覚めると、白い壁が見えた。
いてぇ・・・。
全身が焼けるように痛い。
契約解除された後、中途半端に治癒された後、殴られたり切られたり凍らされたり焼かれたりしたのだ。
他にも精神的にダメージを与える異能も使われたがそっちの方はどうやら、プロテクトがかかっているやらなんやらで特に何もなかった。
多分、玉藻だろう。
記憶を抜く異能もあるはずなのに、起きてすぐに拷問したということは、多分、精神にダメージを与える異能同様、記憶を読めとる異能も全部防がれたのだろう。
『起きたかね。』
「・・・最悪の目覚めだけどな。」
声がした方を見ると、壁に映像が投射されていた。
といっても、声だけで映像部分は真っ黒だが。
『それだけ軽口が叩けるなら、元気なようだな。』
「んなわけあるか。」
今も泣き叫びたいぐらいに全身が痛い。
ただでさえ、契約解除したせいで、単純な体の痛みだけじゃなく痛いのだ。
それに加えて、全身傷だらけでボロボロなのだ。
元気なわけないだろ。
『さて、君に朗報だ。東雲博士と白桜澪に会わせてあげよう。あくまで画面越しだがね。』
「そりゃ、感謝だな。」
『あぁ、その後、君に質問しよう。もしもきちんと答えてくれないようなら、私も心苦しいが、2人に危害を加えざるを得ないな。』
「どの口が言うんだ。最初からそのつもりだろうが。」
『君の英断を心待ちにしているよ。』
プツッと映像が切り替わる。
タブレットで見た映像と同じ、シャルと澪の映像だ。
何かしゃべっているようだが、声は聞こえない。
「澪・・・シャル・・・無事か・・・?」
声をかけると、俺の声は聞こえているのか、2人はこっちを見て、何か口を動かしている。
かろうじて、読唇できたが、とりあえず無事らしい。
「そうか・・・あぁ、今すぐ助けてやるからな。」
俺の視界に、俺しか見えない存在が現れる。
ようやく来たか。
「まったく・・・助けに来るのが遅いぞ。」
『まったく・・・ピンチになる前に呼ぶようにいったでしょう?』
『ゆーと!』
「あぁ、稲穂・・・今、突撃しないでくれよ。マジで死ぬ。」
『これ!』
「あぁ、再契約頼むぜ。」
稲穂が俺の額にキスをする。
俺は稲穂にもらっていたもう1つの新たな狐面を装着した。
急上昇した筋力で異能を無効化するとかいう手錠を引きちぎる。
「なるほど・・・こりゃ、規格外だ。」
『優斗君が規格外なんでしょうね・・・普通なら1尾が限界なのよ?』
玉藻が呆れた様子で俺のことを見ている。
なぜ1尾という言い方をしたかというと、現在、俺は玉藻や稲穂と同じように狐の耳と尻尾が生えているからだ。
金色の狐面の効果は、装着者本人を妖狐に変えること。
そして、適正に合わせてその強化度合いが変わる。
妖狐の強さは尻尾の数で決まると言った通り、生まれたばかりの妖狐のような存在である俺は、1尾が普通だ。
だが、今の俺の尻尾の数は5尾。
生まれたばかりで5尾というのは、確かに規格外だろう。
「くそっ!?なんだあれは!?」
「なんか変な耳と尻尾が生えてる!?」
「もふもふ・・・」
チャラ男とイケメン男、女性は俺のことを見て驚いている。
というかちょっと待て、女性の目つきが非常に怖い。
今にもとびついてきそうな・・・。
「しっかりしろ!トロワ!」
「はっ!こ、凍りなさい!」
「燃えろ。」
女性が放った氷が金色の炎によって一瞬にして燃え上がる。
妖狐の代名詞ともいえる技、狐火だ。
幻術ではない物理的な効果を持つ技だ。
今までの狐面でも使えないことはなかったが、ここまでの威力は出ないだろう。
「特級クラスの炎だと!?どういうことだ!?」
「あちっ!あちちっ!」
「眠れ。」
次の俺の一言で、イケメン男以外の2人がばったり倒れ込む。
「ぐ・・・」
「かろうじて、耐えたか。」
イケメン男も耐えたとはいっても、寝る寸前だ。
もう一度言えば終わる。
「眠れ。」
「う・・・・」
イケメン男もこれで眠った。
『どうなっている!トロワ!サンク!カトル!』
「覚えていろ、くそ野郎。次やったら潰してやるからな。」
『くそ!小僧ごときが!理事会に逆らおうというのか!』
「知るかよ。落ちろ。」
俺の言霊により、プツッと音が途絶える。
どうやら、機械類にも効くらしいな。
「さて、繋げ。」
グニャンと澪とシャルが映っていた映像部分がゆがむ。
俺はそれをくぐり、澪とシャルがいた部屋へと移動した。
「2人とも無事か?」
「ゆうと・・・?」
「・・・は?どうやってきたのよ!」
涙目になってこっちを見ている澪と、目を見開いているシャル。
「というかシャルはまず気になるのそこかよ・・・」
「優斗!」
「おわっ!」
澪は俺に対して突撃してくる。
手足を拘束されてるのによく動けたな。
「外れろ。」
パキンッと音が鳴ると、澪とシャルを拘束していた手錠が外れる。
便利だな、
「悪かった。心配させたな、澪。」
「心配・・・してない。」
顔を俺に押し付けて抱き着いてきてるのに、何言ってんだか。
まぁ、いつものことか。
「で、どういうことよ。それが聖遺物?」
「聖遺物じゃあないな。まぁ、これから説明するといいたいところなんだが・・・」
俺はちらっと玉藻を見ると、玉藻はため息をつくと、うなずいた。
「オッケーが出たから、教えてもよさそうだな。」
「オッケー?どういうこと?」
「こっちの方が手っ取り早いか。玉藻、稲穂、姿を2人に見せてくれるか?」
「いいわよ。」
「分かった!」
俺の横に待機していた2人が姿を見せる。
シャルはびっくりしたかのように、2人を見ていた。
「異能・・・異種型?いや、違うわね。そういえば、アメリカの方に熊に変わる異能者がいたわね。その類・・・でもないわね。多分。」
「おーい、シャル。」
「何よ!」
「いやキレんなよ。とりあえず、紹介すると、まぁ・・・簡単に言えば、2人は妖怪だ。」
「妖怪・・・」
呆然とした様子で呟くシャル。
澪は無反応・・・というか俺に顔を押し付けたまんまで2人のことを見ていない。
「比喩的な意味じゃないぞ。本物の妖怪だ。狐の妖怪、妖狐だ。」
「妖怪なんて・・・」
「いるわけないなんて言うなよ。異能があるんだから、妖怪がいてもおかしくないだろ。」
「うーん、学者としてはどうにも・・・研究させてくれる?」
「ダメに決まってんだろ。」
なんちゅうことを真顔で聞きやがる。
ダメだ・・・シャルはもう2人を研究対象としてしか見てない。
「むー。」
「おい、こら、稲穂。登るな。」
稲穂はシャルの視線から逃れるように俺の後ろに隠れると、よじよじと俺の背に登ってきた。
「あらあら・・・ハーレムね、優斗君。」
「ハーレムか?」
ゆったりと笑っている玉藻をじーっと見続けるシャル。
俺に顔を押し付けたまま抱き着く澪。
自分からおんぶされるような状態になっている稲穂。
場は混沌としている。
正直、ハーレムとは思えねぇ・・・。
「い、一部に関しては訂正するわね。」
玉藻も自分がシャルにジーッと見られているのを気づいたのか、顔を引きつらせながらそう言った。
「まぁ、説明するから、澪も稲穂も離れてくれ。おい、シャル。お前も玉藻ばっか見てないで説明を聞け。」
俺は澪を自分から引き離し、背中にいる稲穂を捕まえて降ろし、シャルに説明を聞かせようと声をかけた。
が、結局、場が落ち着くまでもう5分ほどかかった。
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