第7話 迫った危機2

澪視点

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 もっと強くならないと・・・。

 私は昨日、敵に逃げられてしまった。

 私は異能が目覚めた時からずっと周りから期待されている。

 異能が目覚める前と後で態度が変わらなかったのは、唯一、優斗だけ。

 両親ですら態度を変えてしまって、私はかなりショックだった。

 だけど、優斗が変わらないでくれたから、私は自分を保つことができていた。


「はぁ・・・はぁ・・・」


 今、私は戦闘訓練で戦闘用のボットと戦ってる。

 私の異能『白銀ミストルティン』は他の異能に追随を許さない超火力と万能性を持っていると言われてる。

 実際そうだと思う。

 何でも分解して消滅させる私の異能は防御無効の絶対攻撃。

 それに加えて、それを自在に操ることができる。

 しかも、こういった遠距離万能異能の欠点となる身体能力も異能で強化できるとなれば、世界最強の異能と言われるようになった。

 だけど、私は世界最強じゃない。

 日本で1位ですらない。


「こんなのじゃ、まだ・・・足りない!」


 私よりも強い人からも言われている。

 私の異能の使い方は大雑把すぎるって。

 攻撃を全力で放てば大抵の相手を殺すことができるから、異能の制御が甘いって。

 私は通常攻撃が必殺技だから戦闘での駆け引きが楽って。

 結局のところ光に当たらないように逃げながら攻撃すればいいからって。

 普通はそんなことできないと思うけど、実際に私よりも強い人はそれができている。


「やぁぁっ!」


 私が異能で作った剣がボットを綺麗に切り裂く。

 ボットも上級の異能の攻撃くらいなら傷1つ付かないくらいに頑丈なはず。

 だけど、私の異能なら一切抵抗なく切り裂けるし、消滅させられる。

 こんなのじゃ、足りない。

 

「あー、こいつが噂の【白銀の戦乙女】ってやつか?」


「誰!?」


 私はボットを倒した後、考え込んでいると、後ろから声が聞こえた。

 でも、おかしい。

 私以外は申請がなかったらこの部屋に入ることはできない。

 それに申請があったら私に連絡が来るはず。

 端末を確認しても連絡がない。


「馬鹿が迂闊に声をかけるな。異能が飛んで来たらどうするんだ。」


「えー、なんだよ、カトル、怖いのかよ。」


「当たり前だ。怖いものは怖い。瞬間的な攻撃力で言えば、我々よりも上なのだから。とっさに飛んできた時、誰が防ぐと思っているんだ。」


「そりゃ、カトルだろ。俺は殴る蹴るしかできねぇもん。」


「なら黙っていろ、サンク。」


「へーい。」


 いったい何のコントを見せられてるんだろう。

 それよりもこの人たちは誰?

 2人とも黒いスーツを着ている。

 片方はチャラそうな男で、もう片方はピリピリした雰囲気の男。


「さて・・・サンクの馬鹿が失礼しました。白桜様、あなたに先日の件について協力要請があります。」


「あなたたちは・・・?」


「おっと失礼。私は『ハウンド』のカトルといいます。」


「はうんど・・・?」


 どこかで聞いたことがある気がする。

 確か、優斗が理事会直轄の裏組織って言ってたような・・・。


「まぁ、それはいいでしょう。我々は先日の狐面の男について、白桜様に再び協力をお願いしたいと考えています。」


「ププッ、カトルが敬語って似合わねぇ。」


「黙ってろと言っただろ、サンク。」


「えっと・・・何を協力すればいいんですか?」


「はい、我々が監視カメラなどを使って調べた結果、狐面の男の正体が判明しました。」


「本当に!?」


 前回は逃がしてしまったけど、もう今度こそは逃がさない。

 名誉挽回しないと。


「はい。そのため、白桜様には再び協力を要請します。承認していただけますか?」


「もちろんです。」


「なら、こちらへどうぞ。」


「もう行くんですか?」


「はい、この後何か用事がありますか?」


 優斗と会う約束してるけど・・・今日中に終わるかな?

 一応、連絡しておこう。


「約束がありますけど、連絡しておきます。」


「それは・・・空谷優斗であってますか?」


「・・・?そうです。」


「サンク、もう面倒だ。捕まえろ。」


「おっしゃ!待ってたぜ!」


「何を・・・っ!?」


 うなずいた瞬間、態度を変えてチャラ男の方が襲ってきた。

 異能を・・・何か投げてきた!?

 私は投げつけてきたものごと、男たちに向かって異能を放つ。


「やぁっ!」


「うえっ!?」


「サンク、当たるなよ!」


「なら手伝えよ!」


「ちっ!お前の価値は腕っぷしだけだろうが!」


「ひでぇっ!」


 ふざけてるように見えるけど、2人とも多分、私より強い・・・。

 チャラ男の方は肉弾タイプだから私と相性がいいからどうにかなるけど・・・。

 怒ってる男の方は・・・まだ何の能力かわからない。

 確かめないと。


「やぁっ!」


 ピリピリした雰囲気の男をしなないように考慮しつつ攻撃を放つ。

 だけど、避ける気配は一切ない。

 いったいどういうこと?


「なめてんのか?」


「えっ!?」


 私の攻撃が何かに防がれた?

 いったいどうやって?

 今まで一度も攻撃を防がれたことがなかった私はすごい動揺した。


「サンク!今のうちだ!」


「おっしゃ!」


「きゃあっ!」


 しまった、押し倒された!

 それに後ろ手にされて、手錠をつけられた。

 早く異能を・・・異能が使えない?


「どうして!?」


「おぉ、こいつにも効くのか。」


「一応特別仕様らしいからな。一応、足にもつけとけ。つけてる場所から遠くになると効果が薄れるらしいからな。」


「へーい。」


 どうして、異能が使えないの・・・。

 そうこうしていると、私は足にも手錠をかけられた。


「おっしゃ、あとはつれていけばいいんだよな?」


「そうだ。お前が担げ。」


「放してっ!」


 いやだ!

 助けて助けて!

 優斗!


「うわっ!暴れるなよ!カトルどうする、なんか暴れるんだけど。」


「気絶させろ馬鹿が。」


「それもそっか。じゃあな!」


 あっ・・・優斗・・・たすけ・・・

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