第2話 日常と登校

 昨日の夜、狐面をかぶっていた不審者こと、俺だ。

 一応、俺は16歳なので、今は高校2年生だ。

 ちなみに勘づいているかもしれないが、澪とは同じクラスで、それに加えて・・・


「優斗、おはよう。」


「おう、澪。」


 自己紹介する前に名前がばれたが、俺の名前は、空谷からや優斗ゆうと

 名前から聞くとなんとなく優秀っぽいが全くそんなことはない、どちらかと言うと、落ちこぼれの部類に入る。

 で、今のやりとりでわかったかもしれないが、澪と俺はちょっと親しいというか幼馴染である。

 羨ましいって思った奴いるだろ?

 だけどな、分かれ。

 美少女、優等生、超強いの3つがそろったハイスペック幼馴染がいる身になってみろ。

 自分もハイスペックならともかく、落ちこぼれの部類。

 面倒なことも多いし、結構劣等感を刺激されるぞ?

 俺はもう慣れたけどな。


「なんか、機嫌悪いな、なんかあったのか?」


 澪はあまり表に感情を出さないが、俺は幼馴染なので何となくだが分かる。

 というよりも、今の澪は他の人でも分かりそうなほど、機嫌が悪かった。

 そもそも俺が原因のような気がしなくもないが・・・気のせいだろう。


「昨日の仕事で・・・ちょっと失敗した。」


「澪が?失敗ってなんか物でも壊したのか?」


「標的に逃げられた・・・次こそは絶対に捕まえる・・・」


 げっ・・・こりゃ、結構根に持ってるな。

 次があったら、即あの技で硬直させた後、逃げよう。

 じゃないと俺が絶対に捕まる・・・というか死ぬ。


「珍しいな、澪が標的を逃がすだなんて。猫とかだったのか?」


「猫じゃない。人。」


「嘘だろ、おい。というか、澪から逃げられるレベルの人って少ないだろ。いったい誰なんだ?」


「わかんない。狐の面をかぶってた・・・多分、男。」


 ちょっと安心。

 ほとんど俺の正体にはたどり着いてないみたいだ。


「むぅぅぅ・・・今、思い出してもいらつく!私を裏道に放り投げたまま逃げるなんて・・・」


「ひでぇな、そりゃ。」


「うん、まるで優斗みたい。」


「は!?・・・俺そんなひどいやつじゃないだろ!?」


「ふふっ・・・冗談だから。」


「おいおい、そんなひどい冗談は勘弁だぜ。というかどこかで他の奴に聞かれてたら俺が死ぬぞ。」


 あ、焦ったぁ~。

 俺=狐面の男って結びつけたのかと思ったぜ。

 もう澪には教えておきたいところだけどなぁ、そういうわけにもいかねぇよなぁ。


「大げさ。」


「いや、全然大げさじゃないぞ?お前のファンクラブに何度襲われたことか。俺の異能がこれじゃなかったら平穏の地なんてないぞ。」


 ちなみに狐面については俺の異能とは全く関係ない。

 いや、少しだけ関係あるか?

 まぁ、ともかく、俺の異能は昨日の夜使ったものとは全く別物だ。


「・・・頑張って。」


「ちょいちょい、澪。幼馴染が襲われる件についてはどう考えてるんだ?」


 こいつ、俺から顔を背けやがった。

 ちょっと罪悪感あるな?

 ならば、煽ってしんぜよう。


「なぁ・・・澪。お前のファンクラブに襲われてるんだぜ、俺。ちょっとは可哀そうとか助けてあげようって気持ちはないn」


「ない。」


 嘘だろ?言い切る前に断言しやがった。

 ぐぬぬ・・・だが、まだ俺の演技は続くぜ。


「ないのか・・・そうか・・・」


 必殺!しょげた感じでとぼとぼ歩き!

 どうだ、この哀愁漂う背中、多少は罪悪感がかきたてられ・・・あれ?いねぇ!?


「何してるの?」


 うおっ!?

 俺が声をした方、つまり前を見ると、澪の顔が俺の顔のすぐ前にあった。

 うわ、まつげなげぇ・・・やっぱ、むっちゃ可愛いし、綺麗だよな、こいつ。


「早く行こう?」


「あ、あぁ・・・」


 いやな・・・篭絡されたわけじゃないぞ?

 可愛いから許すって訳じゃないからな?

 うん・・・今回も引き分けだ。

 決着がつかなかったからな。

 俺と澪は学校に向かって歩く。

 俺はこの時動揺していて、気づかなかった。

 澪が顔を赤くして恥ずかしそうな表情をしていたことに。 

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