レオンとライフのダメな日ご飯 卵漬け食パン回
「おーーわーーらーーんーーー!」
11時の時計を見てレオンは思いっきし吼えた。3時間ほど集中できたことは喜ばしいが、3時間の成果がこれだけなのは頂けない。明日には何とかしなきゃ行けない仕事が、2割も終わっていなかった。
「んんぁー……いったん違うことしよう……ライフ!ラーイフ、賞味期限近いものってなんかあったっけ?」
「一度呼んでいただければ聞こえますよ、レオン。賞味期限の切れた食パンが冷凍庫にあります。それから一ヶ月前に賞味期限の切れたクリームチーズが冷凍庫に。」
「あぁー……パン昨日も食べたな。パンとチーズ……」
最近まともにご飯を作っていないせいで冷蔵庫の治安が宜しくないらしい。ともすると全部ダメになるので、さっさと消費する必要がある訳だが。なんかそんな感じで昨日も似たメンツを処理した気がする。
「加熱……しなきゃよな……あ、そういえばライフ、昨日アイクに貰った牛乳って結局何リットルになる訳?」
「900mlが二本なので1800mlですよ、レオン。」
「多っ!」
同僚が「ネット注文で間違えて家にまだ沢山あるんだ」と言いながらティーチャールームに置いてあった麻紐でレオンのカバンにせっせとクソ重い牛乳の入った保冷バッグを括り付けてきたお陰で、冷蔵庫に普段居ない瓶牛乳がいる。文字に起こすと益々訳の分からん奇行だ。
固結びを解く残業をするよりは重いもの持って帰る方がマシかと思ったけど、普通に一人暮らしが消費する量じゃない。そもそも家にあったパック牛乳の残りもあるっつーのに。
「牛乳、チーズ、パン……フレンチトーストかな。」
「砂糖のケースの中身は昨日使い切っていましたよ。ここにストックがありますが。」
棚の上の方にある砂糖のストックの近くまでライフが飛んでいく。レオンは眉を寄せた。
「甘いもの食べる気分じゃないんだよね」
「レオン、甘いものが食べたくないのならばフレンチトーストは適さないのでは?」
「いやまフレンチトーストっていうか、卵にひたったパン?」
説明を放棄して冷蔵庫に近づき、冷凍室から死にかけの食パンを取り出す。次に冷蔵庫を開ける。
食パン一枚に対して卵一個は少ないか。まぁでも、あんまり卵沢山食べるのもよくないし、牛乳沢山いれればいいでしょ。それにチーズでかさ増しされるし。
卵一個、クリームチーズは箱に残っていた二包み。少し残ったパック牛乳と瓶牛乳も出して、冷蔵庫を閉じる。
本当はボウル出してそこで混ぜた方がいいんだろうけど洗い物が嫌なので、バットを出してそこに直接クリームチーズを放り込んだ。
「逆に手間になりませんか、レオン。バットの中だと混ぜにくいとこの間フレンチトーストを作る際に……」
「君は正しいけど人間ってこういうもんなの、ライフ。許して、多分またごねるけど。」
バットをレンジにぶち込んで、500wで十秒ほど温める。柔らかくなったらそこに少しづつ牛乳を入れて伸ばしていく。スプーンで潰すように混ぜる……なぜなら泡立て器は洗いにくいから。食洗機に入れられないしさ。
「緩さが揃ってると混ぜやすいってお菓子作りする人が言ってた。」
「卵の緩さが分かるんですか、レオン。」
「いや全く。ノリでやる。」
案の定「混ぜにくいな」と文句を言いながら一つにまとめていく。途中レンジにぶち込みつつだいたい卵と緩さが揃ったような気がしたところで卵を割り入れて、また混ぜる。多分、卵を事前に割って混ぜといた方がいいんだろうな。やらないけど。ここは案外あっさり混ざる。
そこそこ纏まったらまた牛乳で伸ばして、いい感じの量が出来たら砂糖の代わりにハーブソルトを入れてまた混ぜて。
オススメはここまでの作業をボウルでやってバットに移してからパンを入れること。洗い物が一つ増えるから、レオンはやらない。
出来た液に凍ったまま手で引きちぎって四等分にした食パンをぶち込む。食パン、チンした方が良かったと思う?めんどくさいからいいや。
「あぇ?これこっから30分くらい焼けないじゃん。」
「まだ11:27ですよレオン。お昼には早いですし、作業に戻っては?」
「ンビェグンンン……」
「すみませんレオン、聞き取れませんでした。もう一度お願いします。」
「うん今のは俺も聞き取れない。」
大人しく作業に戻るべくタイマーをかけて、レオンはパソコンの前に戻った。当然、頭の中はお昼ご飯でいっぱいなので集中は出来ない。
「あ、野菜とお肉食べなきゃ。」
立ち上がってフライパンを出して、オリーブオイルをしく。最近新調したフライパンは、説明書に「空焚きすんな」って書いてあったから冷蔵庫から豚肉を出して突っ込んでから点火。
野菜室から取り出した葉っぱ……
「ねぇライフこれなんだっけ。」
「草、と登録されています。」
「えぇ……買い物した時の俺適当すぎん……?」
「画像検索しましょうか?」
「や、食べれる草だろうしいいや。」
「いつでも適当じゃないですか。」
……を洗って、フライパンの上でキッチンバサミで切りつつぶち込んでいく。まな板出さなくていいライフハックである。怠惰とも言う。塩コショウをかけてある程度炒めたら弱火にして蓋。五分くらいしたらお皿に盛ればOK。
そうこうしてるうちにタイマーが鳴る。フライパンをざっと洗ってそこにバターとにんにくチューブを入れて点火。香りがしてきたらそこにバットの卵液ごとパンをINだ。
「うぇーいガーリックの匂い。美味しい確定演出。」
残り卵液が固まってプツプツし始めたらいい感じの合図だ。この辺はホットケーキと似ている。
裏返してまたしばらく焼く。あとは好みで焼き色をつける、のだが。
「新しいフライパン、焼き目つかな過ぎでは……?テフロンってこうだったっけ?今まで馬鹿ふるいテフロンしか使ってなかったから分からん。」
「焼き目をつける料理にこのフライパン使うのは今回が初めてですね。」
「まぁ、焦げ付くよりいいけど。」
焼き目生成は諦めて、焼きあがったパンをお皿に移す。
「よぉし、これでオッケ。さっさと食べよ。」
二つの皿を持ってテーブルへ。必要なカトラリーはフォーク一本だけ。
「ん、ふわふわ!」
「成功したようで何よりです、レオン。」
「野菜と肉もね、油と塩コショウで焼いとけばだいたい外れないね。」
「味付けのレパートリーを増やしてもいいんですよ。」
「えー?塩コショウとカレー粉でだいたい飽きないけどなー。」
首を傾げながらレオンはフレンチトーストもどきを口の中に突っ込んだ。
「うまぁい。仕事も三十分置いといたらふわふわにならんかな?」
「その分、かさは増えるんじゃないですか?」
「え、誰うま……頭柔らかじゃん、俺のナビ天才だな……」
「お褒めに預かり光栄です、さぁ早く食べて作業に戻ってください。」
「前言撤回、頭硬かったわ。」
この後の作業を考えると憂鬱だが、今はとりあえずふわふわ食感を堪能しよう。ご飯が美味しいなら大抵何とかなるのだ。別に仕事は減らないけど。
……なんか目下向こうで通知がピロリンピロリンしてるのが見えるので、マジでかさが増えているのかもしれないけど!
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