50. 正直に。

汐里しおりさん…」

 腕を掴まれて拒んでしまうとそれ以上は来ないってわかってる。

 でも、

「俺…」

 今日の御苑みそのはいつもと違う…。

「何…?」

 多分、それは私が朝帰りして男性と一緒にいたからだと思う…。

 それは俗にいう「浮気」…。

 いや、彼氏(仮)だから違うような気もする…。

 そもそも御苑と私の関係が、恋人という関係で収まれば今の状況が成立するのだが…。

「汐里さんが好きって言いましたよね…?」

「言いましたね…」

 告白は何度か聞いたことがあります。

 何度かお断りしておりますが…。

「大切なヒトだから…」

 傷つけたくない。と、体の関係はない。

 御苑は、もっと欲張りになればいいのに…。って、どこかで思ってた。

「私も大切なヒトだって思ってるよ…」

 少しこちらから攻めた方がよかったのかな…。

 なんて後悔してるうちに、壁際まで追い込まれた。

「嘘だ…」

 いつもと違うのは、強引に口を塞いで…。

 激しくて、何も言えなくなるくらいの…。そんなキスだった…。

「はぁ…はぁ…」

 御苑、待て。

 両手で御苑の背中をタップしたら、御苑が止まった…。

 い、息が…。

「し、汐里さん…は、俺じゃなくても…、いいんでしょ…?」

 息が上がっているのは、御苑もだった…。

「よくないよ…」

 はっきり言いたくなかったけど。

 はっきり言った方が御苑の為か…、私の為か…。

「御苑と一緒じゃなかったら、こんな思いしなくて済んだんだから…」

 昨日のさとうくんじゃないけど、責任取ってよ。って言いたかった。

「好きだよ…」

 壁を殴ってしまった。

「ごめん…」

 壁に一礼して、

「御苑だから、全部話す…」

 だから、ショック受けるんじゃないぞ。

 と、いう目をして、

「朝までいたヒトは私の好みのヒト。だけど、それ以上に御苑は大切なヒト…」

「そうですか…」

 はぁ。と溜め息を吐いて、ふいに笑い出した。

「御苑くん…?」

 暫く笑っている御苑を見ていて、そして目が合う…。

「フラれるのかと思った…」

 え…?

 何で…?

 その選択肢はなかったよ…。

「フラないよ…」

 御苑が好きだから。

 本当はずっとじゃれ合って、恋人だとか家族だとか…そんな枠に収まらない関係でいたかった…。

「御苑に…」

 言われたひとことで傷付いて、喜んで…。

「ボクに…?」

 首を傾げながら、私の頭を撫でている本人に言うのはちょっと恥ずかしいけど…。

「御苑に、……業務で彼氏ですって言われたのが、ショックだっただけだよ…」

 また笑う御苑に、

「歳を重ねると色々臆病になるのよ…」

 ちょっと拗ねて御苑から離れようと抵抗をする…。

「汐里さんって、鈍感ですよね…?」

 しっかり私の腕を掴んで離さない御苑が優しい目で見つめる。

「大好きです…」

 今度は優しくて、

「ん…」

 でも、苦しくて…。

「泣かないでください…」

 そして、目元にキスをする。

 優しくて。

 また泣きそうになるから、目を伏せた。

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BUG RESTORE @tamaki_1130_2020

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