47. 大家さん、現る。

 呼び出し音が鳴る。

「あ…」

 もしかして、場所わかったのかな…。

『大家です~』

 ドンドンドンドンと叩く音が響く。

「ちょ、ちょっと待って…」

 まだ服着てないから…。

 焦りながら服を着て、

「いいよ…」

 とりあえず、見られても大丈夫な格好ではあるので、玄関のドアノブを掴んでいるさとうくんに合図した。

「はい…」

 ガチャッと開けたと同時に、何かが降って来た。

「開けるなら開けるって言ってよっ!!」

 一瞬、古庄こしょうさんかと思うくらいよく似た女性だった…。

 もしくは古庄さんの女装か…?

「大家さん、どうしたんですか…?」

 勢いで、押し倒されたさとうくんが冷静で、

「そして、重いです…」

 退いてください。とひょいと床に移動させた。

「新しい入居者さんのことで相談しようと思ったのに…」

 やっぱり、古庄さん…?

『彼氏、いたのか…』

 そう耳打ちして、

「お取込み中だったのね…」

 ごめんなさい。と言う割には帰らない。

「でも、あなた…以前、ナツメグさんにいらっしゃらなかった…?」

 私を見つめて、

「はい…」

 そう答えると、

「じゃあ、あなたのことかしら…?」

 古庄さんは少し考えるフリをして、

「隣のお部屋に、女性が来ても問題ないわね…?」

 さとうくんを見ながら、首を傾げる。

「はい…」

 さとうくんがコクリ頷くと、古庄さんは立ち上がり、

「じゃあ、ナツメグさんに返事しよっと…」

 素早く玄関前に移動して、振り返り、

「お取込み中に失礼致しましたっ!!」

 万遍の笑顔で、去って行った…。

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