46. ノーカウント。再び。

「ん…」

 あぁ、頭痛い…。

 昨日、楽しく呑んでいた筈なんだが…。

「………ご、めん…んっ?!」

 寝返りをうって、目を開けたら、

「おはようございます…」

 微笑んで、髪を撫でてくれる…。

「さとう、くん…?」

 ええぇっ?!

「そんなに驚かなくても…」

 頭を撫でていたその手が目元に下がって来て、真っ暗…。

 そして、唇に少し何かが触れた…。

「アルコール入ると、本音言ってくれるのに…」

 な、何言ったんだろう…。

 ヤバい…。ほとんど憶えてない…。

「好きって…言ってくれたよ…」

 うーん…。

 そういうことする時に、言うかも…。って、えぇっ?!

 し…、したっ?!

「気のせい…、じゃない…?」

 何で、そうなった…。

 グルグル頭の中で、昨日の事を必死で思い出そうとするが、思い出せない…。

塩田えんださん…」

 ちょっと待って。

 着信が…。

御苑みそのって誰ですか…?」

「同僚だよ」

汐里しおりさんっ?!ドコにいるんですかっ?!』

 開口一番、御苑の大きな声で携帯をちょっと耳から遠ざけた。

「今日、お仕事ですか…?」

 その隙を見計らったように、隙間にさとうくんの顔が…。

 そして、さとうくんとの密着具合が半端ないので密かに抵抗…。

「離れて…」

「嫌です…」

 もういいや…。

 抵抗する気も失せて、御苑との会話に集中することにした。

『男と一緒だったんですか…?』

 ストレートに言えば、そうなんだけど。

「ストレートに聞かれちゃってる…」

 さとうくんは小さく笑いながら、

「そうだよ」

 聞こえるように、少し大きめの声で言った。

『酔い潰れるのはボクがいる時だけにしてください…』

 いつも酔い潰れてませんよ…。

「はい…」

 反省することがいっぱいあり過ぎて、素直に頷く。

『で、ドコにいるんですか…?』

 えぇっと…、多分、隣のアパートだと思います。

 でも、言えない…。

「帰るから、大丈夫…」

 無難な答えを言って、終話。

「塩田さん…?」

 さて、帰ろう…。

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