44. オトコマエな私。

「飲みっぷりがいいですねぇ」

「本当、オトコだよ…」

 漢字の漢と書いての「オトコ」だと言いたいんでしょ…?

「いちみん、そんなだから奥さんに…」

 それ以上は言えなくなった…。

「何で、泣くんだよ…」

 わかんない…。

「そもそも嫁が逃げたのは、俺の上っ面しか知らなかっただけで…」

 大きな手の感触が頭上にある。

「逃げずに向き合って別れた塩田えんだはオトコマエだと思う…」

 優しく頭を撫でてくれると、調子狂う…。

「やめてよ…」

「やめてくださいよ」

 そう言って、店長の手を撥ね退けたのはさとうくんだった。

「塩田さんは俺の…、ですから」

 敵対心むき出しのさとうくんは初めて見る気がして、新鮮だった…。

 可愛い、な…。

「そうだよっ」

 あまり酔ってないんだけど…。

 勢いに任せて、さとうくんの腕に絡まり、イチャイチャしているように…。

 見せかけて、間合いは取っていた…。

「大好きですっ」

「ありがとう~」

 乾杯っとグラスを向けると、さとうくんは私のグラスを奪う。

「ガチな方なんだけど…」

 何度、そう聞いたことだろう…。

「うん…」

 グラスを奪い返そうと、頑張って手を伸ばしたらさとうくんにダイブしていた。

 結果、

 さとうくんに抱きついてしまった…。

「ご、ごめん…」

「狙い通りです…」

 ありがとうございます。と言って、さらに抱きしめられた。

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