39. 仲直りしたくて。

「うーん…」

 御苑みそのが好きなものを作る。

 ちゃんと向き合って、仲直りしよう…。

 近過ぎて、気付かなかったけど…。

 御苑は、失いたくない…。

「今日のお買い得品ですよ…?」 

 追加のたまねぎを箱からゴロゴロと出しながら、

「カレーとか、どうですか…?」

 ニコッて、イケメンがいるよ…。

 最近のスーパーって、目の保養になるよぉ…。って、いかん。いかん。

「まさしくカレー作ろうと思ってたんですよねぇ…」

 何食わぬ顔をして、たまねぎを取る。

「しお、ちゃん…?」

 私のことを「しおちゃん」と呼ぶのは、

裕里ゆうりくん…?」

 佐久さくさんの息子だけ。

 あれから年月経てば、可愛いよりもカッコイイが似合う男になっているか…。

「やっぱり、しおちゃんだっ!!」

 でも、見え隠れする幼さはあの頃のままで。

「今、俺…、ココでバイトしてて…」

 そっか…。

 手がゴツゴツしてて、男のヒトって感じで…。

 手荒れなんかして、ちゃんとバイトしてるんだね…。エライよ。裕里くん…。

「しおちゃんは、今もココでお買い物してるんだね…」

 最近、また来るようになったんだけどね…。

「うん。またお買い得品教えてねっ」

 裕里くんの手を離そうとすると、

「また来てください、ね…?」

 ギュッと離さないように強く掴まれる。

 帰らないでって別れを惜しむ時の姿を思い出した。

 大きくなった、ね…。

「はい…」

 そう返事すると、裕里くんは手を離してくれた。

「あっ!!」

 ん?どうしたの…?

「ごめんなさい…」

 ずっと握られてたせいか、裕里くんの手跡がついてしまった…。

「平気だよ。ただ、跡がついちゃっただけだから…」

 ははは、と気丈に笑い、

「裕里くん、また来るよ」

 この時間帯だけ来ない方がいいかも…。と考えていた。

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