40. 感謝のキモチ。

「ただいま…」

「おかえり」

 普段通りに言えたかな…。

「この匂い…、カレー…?」

「正解です」

 ソファーから立ち上がり、御苑みそのに近付こうとしたら来るなと拒否された。手で。

「いいよ。自分でやるから…」

 ネクタイを外しながら、

「もう遅いから寝てていいよ…」

 はぁ。と溜め息を吐いて、私を見て、

「ありがとう…」

 御苑が近寄って来た。

「御苑…」

 ごめんなさい…。

 と言う前に、目の前から御苑がいなくなった…。

汐里しおりさん、ありがとう…」

 耳元で甘く囁くその声に、

「御苑…」

 ごめん…。と何故か涙が溢れて来た…。

「何で、謝るの…?」

 その声は優しくて、

「汐里さんが謝ることって何かありましたか…?」

 その笑顔も優しくて、

「うん…」

 その優しさに、私は甘えてしまう…。

 でも、

「彼氏じゃないって言いました…」

 これは偽りって思えば、割り切れば…。

「言ってたね…」

「はい…」

「ボクも業務なので構いません」

 笑顔で拒否された気がして、

「ですよね…」

 気付けば、足は自室へ向かっていた。

「おやすみなさい…」

 もう寝よう…。

 寝て何もかも忘れたい…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る