37. DISHARMONY

「いってきます」

 逃げるように、家を出る。

汐里しおりさん、待ってくださいっ…」

 慌てて追い掛けて来る御苑みそのを後目に、

「そんなに急がなくていいんじゃない…?」

 会社には、間に合う時間だよ…?

塩田えんださん、」

 真っ直ぐ前を見つめながら、やましいことはないのに何故かドキドキしている。

「彼氏ですか…?」

 ソレ、と言われる。

「いや、違います…」

 あ、でも今は彼氏(仮)だった…。

 訂正する間もなく、

「彼氏だよっ…」

 不貞腐れて、先に行っちゃった…。

「追いかけなくていいんですか…?」

 向かう先が一緒だから、嫌でも会うし…。

「うーん…」

 とりあえず、追い掛けようか…。

「じゃあ、いってきますっ!!」

 素の自分で言っちゃった…。

 は、恥ずかしい…。

「いってらっしゃい~」

 大きく手を振って、

「塩田さん、大好きですっ」

 さらに恥ずかしいことを言ってくれたさとうくんに、

「あ、ありがとうございますっ…」

 声が裏返って、何故か感謝の言葉が出た…。

「コクったのに…」

 苦笑いするさとうくんが、

「塩田さん、面白い…」

 いってらっしゃい。とゴミ捨て場に向かいながら言った。

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