34. おくりもの

『 塩田えんださんへ

            お詫びの品です。

            受け取ってください。

                                  左藤さとう 』


「お…」

 左藤って書くのね…。

 さとうくんからのプレゼントを開けていたら、

「誰から、貰ったの…?」

 ちょうど見た時に、入って来るかね…。

 感動が冷めるじゃないか…。

「ノックくらいしてください…」

 一応、私の部屋ですから…。

 下宿の身で、言うの…何ですけど…。

「はい…」

 コンコンッと今、ドアを叩くのはどうかと…。

「さっきのカレから、貰ったの…?」

 御苑みそのがスゴク恨めしそうな顔してるので、万遍の笑みで、

「ヒ・ミ・ツ」

 直視できないから、そのまま俯いて箱の中身を眺める。

汐里しおりさん…」

 貰ったキーケースを素早く奪い、

「ボク、本気で好きなんですよ…」

 その気持ちはわかってる。

 でも、

「返してください」

 いつか終わりがあるんじゃないかと思って、このままでいいと思う自分がいる。

「いいですけど…」

 モノには罪ないですから…。って不貞腐れて、キーケースを返してくれた。

「汐里さんがモノでつられないっていうのも知ってますから…」

 御苑は覚悟を決めた顔をして、

「いいですよね…?」

「何が、ですか…?」

 顔を真っ赤にして、

「言わせるんですか…?」

 こんな顔見ちゃったら、ギュッてしたくなる…。

「御苑、可愛い…」

「か、かわ…いぃ……って…い……」

 あぁ、何でこう可愛く言えるんだろう…。

「しっ、汐里さんっ?!」

 お酒の勢いで、いや、だいぶ醒めちゃってるけど…。

 御苑を抱き枕に…。

「おやすみなさぁーいっ」

 御苑の抵抗を肌で感じながら、意識が遠退いた…。

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