30. カミングアウト。

汐里しおりさん…」

「はい」

 古庄こしょうさんが帰ってから、御苑みそのが襲ってくるのは覚悟していたのだが。

 改まって、言いにくそうにしている御苑に、

「どうしたの…?」

 私、何を聞いても大丈夫だよ。

「その…」

 御苑がモジモジしてて、じれったくて、

「何聞いても平気だって…」

 打たれ強く生きて来たから、それなりに耐えれるよ…?

「ごめんなさいっ…」

 何故、謝る…?

「ボク、その…」

 多分、何となく頭をよぎっているものが当たっているならば…。

「はじめてなんです…」

 の割には、グイグイ来てたよね…。

「そう…」

 だから、何…?

「『だから、何…?』って顔してますよ…」

 怖い。って抱きつく御苑に、

「無理にしなくていいよ…」

 軽くキスをして、

「こういうのだけでも、充分…」

 少し笑って、

「じゃあ、おやすみなさい…」

 くるりと向きを変えて、自室へ戻る。

「ち、違うんですっ…」

 と、御苑は後ろからギュッと…。

「御苑、無理しなくて…」

 いいって…。

「ん…」

 首筋をなぞるようにキスするけど、御苑が震えているのがわかる…。

「御苑…」

 やっぱり、泣いてる…。

「そんなに急がなくていいんじゃない…?」

 よしよし。と泣きじゃくる御苑を宥めた。

「したいのに…」

 泣きながら、性欲は薄れないとか…。

 若いな…。

「怖くて…でも、したいんですっ!!」

 わかった。

 わかったから…。

「御苑、ただやりたいだけにしか聞こえないよ…」

 ちょっと冷静に考える時間が必要だと思う。

 私も、だけど…。

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