27. 実は。

「便利屋は名前だけで、実は…」

「別れさせ屋」

 想定内で、驚きがなかった…。

「主に、普通じゃない案件が回ってくるんだよね…」

 普通じゃない…?

 いや、私、普通だし…。

「うん。汐里しおりさんのところの案件は普通だったよ」

「依頼主が普通じゃないって勘違いしちゃうこともあって…」

 そうか…。

 この胸のせいで…。

「いや、あの…」

 俯き落ち込んでいるように見えたのか、目の前であたふたする御苑みその

 咳払いをして古庄こしょうさんが、

「依頼主が汐里さんを男だと勘違いして、俺らのところにこの案件がやって来た」

「でも、ボク、汐里さんだってわかったからボクがやるって言って…」

 さらに御苑の顔が近付き、咄嗟に仰け反った。

「近い…」

 嫌そうな顔で、退けと言わんばかりの扱いをしたところで、

「いいじゃないですかっ」

 御苑は、マゾ気質なのだろうか…。

 と思う程、めげない。

「よくない」

 御苑の下半身がよく反応しているので、これ以上はよくない。

 軽く蹴ったのだが、

「うぅっ…」

 痛がる御苑から離れた。

 ハグが前とは違う。

 あっさりかこってりかで言うと、あっさりじゃない…。

 欲求不満、か…?

 何となくあのヒトの顔が思い浮かんだ。

「守秘義務かと思いますが、依頼者って誰ですか…?」

 二人して、口に手を当てる。

「言えない…」

「言えない…」

 二人で持っているA4サイズの用紙がヒラヒラと見てくださいと言わんばかりに揺れる。

「よ、読めない…」

 ピタッと止まった。

 その書類は何が書かれているのだろうか。と目を細める。

 老眼が若干、出ているのでツラい…。

 ………調査票、だ。

 依頼者の欄には、見覚えのある名前が載っていた。

「あぁ、言えないのが残念だ…」

「ですよねぇ」

 この二人、本当にイイヒトだ。

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