22. 恨み辛み。

 事務所に戻ると、誰もいない…。

 佐久さく所長と一緒に行くってワケでもなかったのね…。

「はい。塩田えんだです…」

『塩田さん…』

 ハァハァ言ってるのは、気のせいにしておこう…。

「ご用件は…?」

『今日は直帰しますっ!!』

「はい…」

 それは、名波ななみでもよくないか…?

 それとも、あえて名波が気を利かせて…、なワケないか。

『それから、帰りが遅くなります…』

「はい…」

 そっか…。

 え…?

 何で、落ち込んだ…。

『夜は一緒に食べれなくてごめんなさい…』

「お構いなく、です…」

 戻って来た名波に、ありがとうと口パクしてお辞儀する。

「後ろ…」

 気を付けて。と言われて、振り返った時には遅かった。

 佐久所長に受話器を取り上げられ、即座に電話を切ったのは名波。

「名波さん、私に何か恨みでもあるのか…?」

「はい…」

 名波は、

「元妻のことだとか、息子さんのことだとか…?」

 鼻で笑って、

「家族ぐるみで塩田さんを傷付けるの、やめたら…?」

 PCに向かって、作業をし始める。

「個人的には、佐久所長の元妻対応の件です…」

 佐久所長との件で、修羅場を見たのは私だけじゃない。

 名波も、だ…。

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