21. 面倒なので、否定しない。過去とこれから。

「そうか…」

 生菓子かよ。

 冷蔵庫にそのまま入りそうな箱でもない…。

「面倒だな…」

 とりあえず、箱を切るか…。

塩田えんださん、忘れてた…」

 コレ。と言って、もう1セット増えた…。

「あ、ありがとうございます…」

 嫌がらせですか…?

 私、何かやらかしましたか…?

佐久さく所長、コーヒーでよろしかったですか…?」

 気を取り直して、これ以上ない笑顔で伺った。

「うん。ありがとう…」

 とりあえず、インスタントコーヒーを淹れる準備をする。

「相変わらず、手際いいね…」

 近い…。

「どうしたの…?」

 近いんですってばっ!!

「パワハラですよ…」

 ひとことで済ませたのに、

「おめでとうって言いたくない…」

 どうやら、このおなか周りにある手を退ける気はないらしい…。

「タイプじゃないでしょ、アレ…」

 はぁ。と溜め息を吐いて、もっと体を寄せるので佐久所長の体温を感じる。

「佐久所長…」

 佐久所長の手に触れて、

「コーヒー、どうぞ…」

 目を合わせて少し上目遣いで言ったが、プクッと頬を膨らませて、

「いらない…」

 こうなった佐久さんは、言う事を聞かない…。

「せっかく淹れたのに…」

 背後にこびりついた佐久所長をこの際無視して、冷蔵庫まで移動する。

「俺よりお菓子なの…?」

 あんたが買って来たんでしょうがっ

「塩田さぁーん…」

「はぁーい」

 大きな声で返事するが、佐久所長はまったく離れる気はないらしい。

御苑みそのくんから電話だよ」

 呼びに来てくれた名波ななみが、佐久所長を剥がしてくれた。

「ありがとう…」

 持つべきものは、過去を知る同僚かな…。

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