17. あたたかい場所。

「おはようございます…」

 あぁ、眠い…。

 何かが口に当たる。何だ。この感覚は…。

「ん…」

 キス、か…?

 負けないぞ。…って、あれ…。

 誰と…?

「………っ、はぁ…はぁ…」

 息切れしている声は、

汐里しおりさんっ!!」

 御苑みその、か…。

 そう言えば、昨日、引っ越して来たんだった…。

「おは、よう…」

 寝起きは、声が出ない…。

 擦れた声に、

「汐里さん、声変わりしました…?」

「はい…」

 只今、成長期です。

「な、ワケないだろ…」

 元々、声は低い方ですよ…。

 あー。

 あー…。

 声帯を整えて、

「オバサンは朝、声が出ないんだよっ!!」

 朝から、無駄に声出した…。

「無理しないでください…」

 咳き込む私に、御苑は背中をさすって、

「汐里さん…」

 そして、首筋にキスをする。

「朝ごはんは、パンとベーコンエッグでもいいですか…?」

 野菜買うの忘れちゃって…。って、自炊してるの…?

「自炊してるんだ…。エラいね…」

 ここ数年は、自炊してなかった。

 コンビニ弁当や惣菜で、賄っていた。ヒトリだったから。

「汐里さんは、自炊してなかったんですか…?」

「うん…」

 アクビして、伸びしながらふと現実に戻る。

「あっ!!」

「どうしたんですか…?」

 ココ、御苑の部屋じゃない…か?

「ただ、寝てただけですよ…」

 私のアクビがうつったのか、アクビをして、

「ボクも眠いので…」

 チューくらいしか出来ませんでしたよ…。残念。って。

「もう一回、します…?」

「しません」

 起き上がり、不貞腐れて、

「早く食べましょう…?」

 御苑が手を差し伸べるので、

「はい…」

 その手に掴まり、起き上がる。

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