13. 到着。

「到着です~」

「お疲れ様でした…」

 駐車場、到着。

 なので、何となくキスを仕掛けた。

 それなりに濃く、深く。

「………ん…っ……って、塩田えんださんっ?!」

 途中で止めたのは、御苑みその

「お礼です…」

 それ以上はないよ。

 と言いたげに、ドアを開けて外に出る。

 あ…。

 向かい側のアパート、見覚えがある…。

「本当、生き地獄です…」

 御苑がそう言いながらフラフラと出て来て、

「塩田さんは、先に…」

 って、知らないよ。

 首を横に振りながら、御苑の服の袖を引っ張る。

「知りませんでしたっけ…?」

「知りませんよ…」

 誰かとお間違いになられてませんかね…?

「何回か来てますよ…?」

 そう言いながら、荷物を降ろし始める御苑に、

「一度も来たことないよ…」

 悪酔いしたって御苑の家には来たことないぞ。……多分。

「ありますよ。介抱した時に何度か…」

 憶えてないと思いますけど…。って、さらっと言ったな。

「塩田さんの家がわからなかったから、連れて来たんです…」

 さっきから特定の1階のベランダに荷物を搬入しているが、もしや…。

「俺の部屋、ですよ…?」

 鍵を渡されて、

「合鍵です。どうぞ…」

「はい…」

 素直に受け取って、御苑を見る。

 御苑は目を逸らして、

「先に入っててください…」

 車、返して来ますっ!!と言って、車に乗り込んだ。

「いや、でも…」

 御苑は車から顔を出して、

「塩田さんはゆっくり休んでてくださいっ!!」

 いつもの無邪気な笑顔で、頷くしかなかった。

「ありがとう…」

 遠ざかる車に向かって、そう言った。

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