11. 荷物の行方。

 玄関を開けると、

「こんばんは~」

 見慣れたスーツ姿ではなく、引っ越し業者のような作業着姿の御苑みそのがいた。

「どうぞ…」

「お邪魔しますっ」

 今の仕事の前に何かしてたって言ってたな…。そういえば。

「それで、お荷物の方…」

 テレビを観終わって、自分の部屋に戻ろうとする同居人と目が合う。

「便利屋『ゆず古庄こしょう』の御苑ですっ!!」

 営業スマイルが眩しいな…。

 職業病、だな。

 普段はこんな笑顔をふりまいているワケですか…。

「どうも…」

 会釈して、そのまま部屋へ戻る同居人を目で追って、扉が閉まったのを確認してから。

「それで、塩田えんださんのお部屋はドコですか…?」

 いつもの御苑に戻る。

「こっちだよ…」

 と、扉を開ける。

「お邪魔しますっ!!」

 うわっと驚いている。

「荷物、少ないですねぇ…」

 そうかな…?

 Lサイズのゴミ袋6袋に、縦にも横にもA4サイズが入るダンボール1箱、お布団一式…。

「ゴミ袋に入ってるのが服で、お布団はそのまま畳んだだけ…」

「じゃあ、そのお布団から持っていきましょうか…」

 御苑はしゃがんで、おもむろに取り出したデカい布でお布団を包んだ。

「ありがとう…」

「塩田さんはゴミ袋に入った服を持ってください…」

「はい…」

「人件費の都合で、ボクしか来れなかったので…」

 すみません…。とお辞儀する御苑に、

「いえ、こちらこそ急に頼んだのに来ていただいてありがとうございます…」

 お辞儀し返した。

汐里しおり、何か手伝おうか…?」

 部屋に戻った筈の同居人が、顔を出す。

「何も手伝わなくていいです」

 と言ったのは、御苑だった。

「運ぶくらい手伝うぞ…?」

 そう言って、私が持っていたゴミ袋を持って、御苑に、

「どこに停めたんだ…?」

 持ってく気満々の同居人の後ろ姿を睨みながら、

「駐車場に停めましたよ」

 5番の。と言って、御苑は同居人の後をついて行った。

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