10. 自己完結。放心。

 携帯電話の呼び出し音が、心地よい…。

 いや、今はどんなジャンル聞いても心地よい、かも…。

御苑みその、終わったよ…」

 ふぅ…。

 やり切ったぜ。

『お疲れ様です』

「お疲れ様でした…」

 やり切った感がいっぱいで寝てしまいそう…。

 今、お布団に潜り込んだら危険…。

『今日、運べるものは運んじゃいますねっ!!』

 そう言えば、私、これからドコに…。

 冷静になって、

「私、…」

 考えれば、考える程、

「行けない…」

 このまま話が進んでいくと、きっと…。

塩田えんださん、気付いちゃいましたか…』

 残念。っていつもの優しい声が、

『ひと部屋空いてますので、お部屋見つかるまでいいですよ…』

 もっと優しく聞こえてしまう…。

 甘えたくはないが、野宿できる心意気はない…。

「ありがとう…」

 御苑には、いつも何かしら甘えている…。

 いけないと思いながら、いつも甘えてしまう…。ごめん…。

『塩田さん、大きな荷物は結構ありますか…?』

「いや、そんな大きな荷物はないよ…」

 ノートパソコンと、今使ってる鞄と服…くらいだもん。

『ベッドとか…家具はどうするんですか…?』

「置いてく。同居人の、だから…」

 中身だけ持ってく。

 後のことは、知らん…。

「あ、でも。お布団だけ大きな荷物かも…」

 これは同居人と一緒に寝ないように買ったもので…。

 ヒトリで大丈夫だって…。

 決意したものだから。

『なるほど…』

 声が低くて、ちょっとカッコイイって思っちゃったよ…。不覚にも。

『また電話しますから。荷物まとめててください』

 仕事でもあまり聞かないような真剣な声に、

「はい…」

 ちょっとドキッとしてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る