07. SAYONARA

 私の家であって、私の家ではない。

 浮気してるの、知ってるよ。

 全然使わない台所の水回りがキレイだもん。

 今日もこの家に上がらせたんだろう。ドケチ。

「ただいま…」

「おかえり…」

 ただ待ってるだけの同居人なのである。

 家事は一切しない。

「それで、どうしたの…?」

 何かあったの?くらいの顔をして、隣に座る。

 面と向かって喋るの、無理…。

「その…」

 私の顔を見て、話そうとしているので、一応、見る。

「はい」

 何言われても、大丈夫。

「今、付き合ってるヒトがいて…」

 うん。と頷いた。

「子供が出来たんだ…」

 ありがちな別れ文句だった…。

 でも、それ若かりし男性ならアリな言葉だと思う。

 同居人はワタシより3歳上の40超えのいいオッサンなのだ。

「それで…?」

 むしろその歳で避妊しなかった非常識に、頭に来た。

 同居人は正座して、

「す、すまん…」

 謝るだけで、その先を何も言わない。

 どうしたいんだよ…。

 あまりに腹が立って、

「別れてくださいってことですか…?」

 立ち上がり、食器棚を開ける。

「はい…」

「そう…」

 こんなヒト、好きだったんだ…。

 いや、こんなヒトにしてしまったんだ…。

 最低だな。私…。

「バイバイ…」

 全て捨てないと次に行けない気がして、

「や、やめろって…」

 止める同居人の声と何かが割れる音だけが暫く響いていた。

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