04. 帰りたくない。チラ見。

 ピッ…。

 ピッ…。

 ピッ…。

 いくらだろう…。

 スキャン音を聞きながら、財布を取り出す。

「ん…?」

 あれ…?

 小銭入れがない…。

「………円です」

 職場に置いて来た、かな…。

 じゃあ、長財布で。

「ゴメン。現金で…」

 と、お札を渡して、名札をチラ見。

 さとう…。

 さとう…。

 憶えたところで、お得なことなんて何もないんだけど。

「………円のお返しとなります」

「ありがとうございます…」

 相変わらず、キレイな手だなぁ…。

「お箸は1膳でよろしいですか…?」

「はい…」

 本当、あと10歳くらい若かったら…。なんて考えてたら、

塩田えんださん…?』

 青年の小声で、我に返る。

 いかん。いかん。口まで開いてたよ…。

「はい。どうぞ」

「ありがとう…」

 いつもの不自然な笑顔を返して、店の外へ出る。

 帰りたくない…。

「はぁ…」

 職場、戻ろうかな…。

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